小説

□ラスト妄想文
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てれてれ ラスト妄想



本文を読むのに必要なあらすじ。

偶然公園で寝ていた換代の確保に成功した榊達。最の為、全員確保しようと換代にアジトの場所を聞くが彼は口を割ろうとしない。仕方なく最を呼ぶが、警察署に破壊の影が忍び寄る。












「頼む、最の為に君達の住処を教えて欲しいんだ!」

「やだ!あそこには…あそこには皆がいるんだ!それに絶対教えちゃダメって荒生が言ってたもん!」

警察署内の独房に二つの叫び声が木霊する。一人は特別警察隊主任榊の声で、もう一人は超能力者差別の社会を超能力で是正しようとする破壊組織のメンバーの一人である換代の声、頑なに拒み続け、独り独房の隅で震えていた。

「くそ…どうすれば…」

最の為と言うのは、破壊組織に会ってから最は「彼らを救いたい」とずっと言い続けていた。一度言い出せば止まらない事も知っていたし、何より昔からプロイの社員達の様な問題児をそのお人好しで孤独から救いだし手懐けてしまった最ならそれが可能だろうと破壊組織のメンバーの更生の可能性に賭けたからである。珍しく真剣な顔をしていた最は榊に声を掛けた。

「榊」

「最、すまん。俺じゃ話してくれないみたいだ」

参ったな、と胸ポケットに入っていた煙草の箱を取り出し、榊は苦笑した。いいよと最は首を横に振り、そして、「ちょっと言い方が乱暴だっただけさ」と返した。

「俺に話をさせて欲しい」

「……あぁ」

ごめんと呟いて独房の鍵を壊すと、最は優しく隅で震える換代を手招いた。

「おいで、ここは寒いでしょ?暖かいところでちょっと僕とお話ししようよ」

最は場に流れる暗い雰囲気を『壊す』のも得意だった。彼の不安をも『壊して』しまったのか、今まで隅っこから動かなかった換代が恐る恐るやって来て、差し出されていた最の温かい手を握る。

「……温かい…」

「君の手も温かいよ。優しい子の手だ」

「僕を…外に出していいの?」

「君の事、信じてるからね」

「…………」

誘われるままに、換代は立ち上がり、署内の事務所へと向かう最の後ろを静かについて行く。更にその後ろを写水と榊がついて行く。事務所に着くと最は換代を事務所にあったソファーに座らせ、榊にお茶を頼む。暫くして榊からお茶を受け取り換代と向かい合う様に座り、換代の前に淹れたてのお茶を置いた。

「今日も良い天気だね」

「……うん」

「あのね、僕は君達に悲しくなるような事して欲しくないと思ってるんだ」

普通の会話をし始めたかと思いきや、急に最は本題に入りだした。そのまっすぐな目線の先には換代、だがしかし最はその先にある荒生や為政といった換代の仲間も見ている様であった。思わず換代は俯き視線を逸らしたが最はまた珍しく、「僕の目を見て欲しい」と強く、換代に願った。

「君達が復讐したいのは解るよ。僕はそれを無理に押し殺してって言いたいんじゃない。それを別の形に『変えて』欲しいんだ。君になら出来るだろ?『チェンジャー』の君なら、いや、チェンジャーじゃなくても君になら出来るね。僕はそう思う」

「かえ、る…?」

「うん。皆の気持ちを変えてあげるんだよ。悲しみいっぱいじゃなくて嬉しさとか楽しさいっぱいにさ、そしたら幸せになるよ。もちろん、君の悲しみもね」

「僕に…出来るかな…?」

「出来るよ。例え君一人で出来なくても、僕が手伝ってあげるし、君の仲間だっている。皆で楽しい事して笑えばすぐに楽しさいっぱいになるよ」

「ホント…?」

「ね、ホントは君もこんな悲しい事皆にして欲しくないんでしょ?僕が止めてあげる。君の仲間の負の部分、全部受け止めて壊してあげるよ」

パッと換代の顔が一気に明るくなった様に思えた。声のトーンも上がっている。最の近くへと移動すると楽しそうに換代は最に話し掛けていた。その様子を少し距離を置いて見ていた榊と写水はほっと胸を撫で下ろすのと眉間に皺を寄せるというまったく別な反応をしていた。

「とりあえず、どうにかなるかもな」

「だと、良いですけど……」

「写水?」

「換代君の事を心配した荒生がここに来たら……」
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