* B o o k *
□悪漢様のこだわり
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アカギがカイジの家に住むようになって暫く経った休日の夜。
お互いにそれぞれシャワーを浴びて、寝る仕度をしていた。
「カイジさん、ドライヤー次使いなよ。」
勿論、元々この家にドライヤーなんて最初からあったわけではない。
長い髪を自然乾燥に任せているカイジを見兼ねて、アカギが買ってきたのだ。
自分は短髪だからさほど問題ないが、カイジ程の長さがあれば、髪は乾き難い。
風邪を引いてしまうし、髪にも良くないだろう。
電気代などの光熱費も、折半にしているのでカイジも咎めたりはしなかった。むしろ感謝していた。
この時期、自然乾燥は正直キツい。
ストーブに近付いてタオルドライするなどして凌いでいたが、
結局生乾きで寝ることが多く、それはあまり気持ちの良いものでは無かった。
「毛先からじゃなくて根元から乾かすんだよ。」
ガシガシと髪に手を入れて乾かし始めるカイジに、アカギが横槍を入れる。
「一方方向に熱を当てるとにツヤが出るらしい。キューティクルって言うんだっけ?」
「お前良く知ってるな。」
「テレビでやっていた。」
アカギから繰り出される耳慣れないワードに、カイジは正直ついて行けて無かったが、取りあえず言われた通りにやってみる。
自分に興味のあることにはとんでもない集中力というか、拘りを発揮するアカギ。
恋人の髪質はやはり気になるらしい。
「最後は冷風ね。」
「分かった分かった。」
髪全体の余分な水分が無くなると、ドライヤーを止めて軽くブラッシングする。
「おお!すげぇ!なんか本当にサラサラになってる!」
最初は正直面倒臭かったが、ここまで違うのか、とカイジは驚いた。今度から少し気をつけてみよう。
カイジが感動していると、アカギも満足そうにカイジの髪を手櫛で掬う。
「本当だ。綺麗にできたね、カイジさん。」
「へへ」
得意げに、でも少し照れたように笑うカイジに、アカギも思わず微笑んだ。