* B o o k *
□拠り所
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年末は憂鬱だ。
毎日が特別番組だし、居酒屋も忘年会ばかり。
何もしていないのに胃もたれするような雰囲気が苦手だ。
妙な焦燥感と虚無感の中、喧騒に埋もれてしまいそうになる。
またひとつ、塗りつぶされた一年。
何が変わっただろうか。
それなりに色々あったが、
確かに分かったことは、人は忘れる生き物だということだ。
特にカイジ自身がそう。
どんなに痛い目にあって、もう懲り懲りだと思っても、喉元過ぎれば熱さを忘れる。
同じことの繰り返し。
救えないのは、別にそれでも良いかと思っていることだ。
それに、今はそんなカイジを肯定してくれる存在がいる。
「ただいま。カイジさん。」
この男…
自分を好きだと言ってくれるアカギが好きで、
アカギを好きな自分が好きだ。
この気持ちが誇りだ。
「どうしたの?窓辺で黄昏ちゃって。何考えてた?」
「…お前のこと。」
夕焼けに照らされたカイジの優しい笑顔は
ひどく、綺麗だった。
「そう。俺もだよ。」
当然のように返すと、アカギはいても立ってもいられなくなり、カイジの元に駆け寄った。
「来年も宜しく。」
そんな似合わないことさえ言えてしまう様な、そんな冬の宵。
end.