Singing voice
□rejoice
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私の姉は、私とずいぶん歳が離れていた忍だった。
私が生まれてすぐだろうか、木ノ葉では大きな戦いがあった。
そのときに人よりも早く中忍になった姉は…そのときに、死んでしまった。
ずっと憧れていた人が、姉にはいたらしい。
その人を庇って、あっけなく死んでしまったそうだ。
あの事件は、今も木ノ葉の人々を苦しめている。
私の父も、母も、そして…私自身も。
…それ以来、私達家族は忍と言う職業から身を引いた。
今は、一般人となんら変わらない暮らしに安定してしまっている。
この周りで、うちの家が忍だったと言うことを知る人はもうほとんどいないだろう。
それなのに、どうして?
もう一度、彼に目を向ける。
しばらく見つめていると、彼は返事をようやく返してくれた。
「…忍なら、気配で分かるんだよ。
チャクラ…なんて言われても分からないか。気みたいなものでわかるんだ」
「ああ、なるほど…占い師みたいなものですね」
「それとこれとは別だ…」
「え、違うんですか?」
だとしたら何が違うんだろう…気ってつまり「見える!見えるぞ!そなたのオーラが!」的なものじゃないの?
それとも、「そなたの背後に霊がついておる!邪悪…なんて禍々しい霊…」とかだろうか?
なんて、真剣にウンウン考えていたら、その人はついに笑い出してしまっていた。
「くっ…くくっ…」
「…何が、おかしいんですか」
「お前の思考が変わっていて、ついな」
「…え?もしかして私、声に出してました?」
「ああ」
お腹の部分を少し押さえながら笑う彼が、肯定する。
途端に恥ずかしくなって赤くなる頬、でも、そんなに笑われたら、なんだかこっちまで笑えてきて…なんてことを考えた瞬間、もうドツボだ。
「ふ…ふふっ…おかしな人…っ私は普通のことを言っているだけなのに」
「それはオレも同じだ。なんでこんなに違うんだ」
日が暮れた森に、小さな笑い声が響き渡る。
どれくらい笑っただろう?
ようやく落ち着いた頃に、彼はポツリと呟いた。
「お前、不思議な奴だな」
「あなたこそ」
こんなに笑ったのは久しぶりだった。
何かが心の中で渦巻いている。
それは暖かくて、不思議で、変な感じのもので。
「あ、そういえば。私あなたの名前知りません」
「…日向ネジだ。そういうお前こそ名乗れ」
「ずいぶんな口調ですね。…私は香月…」
「美冬といいます!」
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それはすべてのはじまり
すべてが歪んでしまった瞬間
私とあなたとの関係は、ここから始まった
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rejoice