Singing voice
□rejoice
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すごく、きらきらしている気がしたの。
ああ、きれいだねって…
まるで幸せが降ってきたみたいだねって…
あのときは、それを信じていたの。
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いつもと変わらない森の中、私ではない人に抱かれているツバキ。
銀色の額宛、前にもみたことがある。
家の仏壇の上に置かれていたものと、同じもの。
忍者、だ。
母上と父上が嫌う、忍者。
『彼らと関わってはいけませんよ』
何度も何度も言われた言葉、一般人は忍者と関わってはいけない。
良いことなんて、どこにもないから。
(ごめん、ツバキ)
くるりとその人に背を向ける。
ツバキとはまた明日、いつもの時間に会えばいい。
一歩、前へ足を踏み出す。
そのとき、だった。
「オイ、この猫…おまえが飼っているのか?」
後ろから、声が響いて、私はくるりと振り返った。
そこには、ツバキをなでながら話しかけるさっきの人がいる。
今の声はきっと、その人のものだ。
「いえ…私の家はペット禁止なので…こっそりとたまに様子を見ています」
「…そうか。名前を呼んでいたから、放し飼いしているのかと思った」
「猫さんって呼ぶよりはいいかな…と。ちなみにツバキ…その猫、あなたが飼っていたりします?」
「いや。つい先日見つけたばかりで、飼ってなどいない。任務ばかりで面倒などみれないからな」
ああ、やっぱり忍者さんなんだ。
その言葉一言で、話していたら少しだけ縮んだ距離が元通りになってしまった。
「…お前は、忍ではなさそうだな」
彼も、私の服装などから、気づいたのだろう。
否定する必要なんてないし、ただ、素直にうなずく。
「今年普通学校を卒業して…あとはどこかで就職する身です」
「・・・本当か?」
「え?…あ、はい」
ふーん…と、彼は考え事をするように首をひねる。
ツバキは、その弾みに地面に降りていってしまった。
抱きかかえると、ふさふさの毛が、私の首筋を掠めた。
彼はまだ首をひねって考え事をしている。
それからしばらくして、私をみた。
「…一つ良いか?」
「はい?」
「お前の家族とか、親戚に…忍はいるか?」
「…え?」
――ナンデ、ワカッタノ?
「…死んだ姉が、忍をしていました。姉が死んで以来、私の家は忍たちと決別し…一般人として、今は普通に暮らしています。
でも――…なぜ、わかったんですか?」
彼の白い瞳の中に、私の姿がぼんやりと映っていた。