Other
□Singing Girl
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“最近夜の公園に綺麗な歌を歌う女の子がいるんですって”
“まぁ、本当ですの?それは是非聴きたいものですわ”
“一体何処の家のお嬢様なのかしら…”
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最近、学園や周辺にある噂がある。
学園のすぐそばには大広間がある、そこで毎日誰かが天使のように美しい美声で歌を夜な夜な歌うそうだ。
聞けばナイトレイ公爵やベザリウスの奴らなどの貴族達まで聴きにいき、気づけば少しはましな会話をしてお互い帰るそうだ。
貴族か平民かわからないその少女、わかるのはそいつは顔を隠し、この学園の制服を着ているということだった。
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いつものようにエリオットがリーオを引き連れ図書館までの道を歩いていると上級生とすれ違った。
「ミスエイダ=ベザリウスが風邪を引かれたそうよ」
「まぁ!今の時期は寒いですものね」
いつもならこんな会話、聞き流してそのまま終わりだろう、しかし今日は違った。
「そういえばあの歌姫はミスエイダの声と似ていた気がしますわ」
ピタッと、エリオットは歩みを止めて立ち止まってしまった。
「どうしたの?」
リーオがエリオットの顔を覗き込むと、彼は険しい顔をして言った。
「放課後…夜に、広場に行くぞ」
嗚呼やっぱり君ならそうすると思ったよとリーオは笑った。
(最近、ミスエイダにキツく当たることもなくなったからね。
むしろ気になりだしてるみたいだ…これも彼のおかげかな?)
『オレが攫われようが殺されようが本当に関係ない話だろ?』
『てめえはどれだけの人間を傷つけてきた…この死にたがり野郎が!!』
多分彼ははじめて人に溜め込んでいたものを吐き出したんだろう、エリオットはそれをしっかりと受け止め、前に進むことを促した。
たとえそのときベザリウスだとわかっていなかったとしても、わかっていたとしても、きっとこの結末は変わらない。
だから彼はエリオットに友達になりたいと言ったんだろうとリーオは思う。
思いながらも、静かに普段なら真剣に本を選ぶはずのエリオットが、今日は一段とぼんやりしながらロマンス小説を手に取り、見た瞬間吹き出していたのを眺めていた。
さて、自分もあの本…『堕天使の涙』シリーズの続きを探そう…と歩き出した瞬間、主人が「今日は集中できない」と言い出してしまった。
…結局借りてから帰ったのだが。