Singing voice
□2.流れる涙を
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「“眼を背けたくなるくらいの
悲しい現実に向き合って
私は歌うよ、相応の詩を”」
静かに慰霊碑にその声は響く。
涙も枯れ果ててしまうんじゃないか、と思う程この日は泣いていた。
「ここにいたのか」
ハッと顔をあげるとそこには自分の許嫁がいた。
「・・・ネジ」
「三代目の葬儀、行かなかったんだな」
「当たり前だよ・・・」
わかってるくせに。
なんで行かなかったくらい分かるでしょ?
嫌みのつもり?
「今日は・・・あんたたち日向に香月一族が滅ぼされた日だから」
皮肉にも三代目の葬儀と重なってしまった。
家族の命日・・・
「美冬…」
この日は朝から夜までずっと居続けていた。
泣きながら歌いつづけていた。
大好きだった家族の為に・・・
「香月は…本当に良い人たちばかりだったな…」
「っ…それを壊したのは…!!」
感情的になる美冬にネジは静かに言った。
「あぁ…オレだ」