桜の記憶
□始まり
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「……って、事で此処に召喚課の奴が来るらしいからバレないように気を付けろよ」
「はぁ」
昼休み。同僚の気配を感じ屋上に行くと彼がいた。
金髪碧眼。美形の部類に100パーセント入る容姿。どこぞの外国人だお前はと突っ込みたくなるが、彼の名前は蓮城篤志。れっきとした日本人である。今は死神だが……。
「で、篤志。その召喚課の資料今あるか?」
「ほい、これ」
篤志から資料を受け取り、パラパラと斜め読みをする。しかし、あるページで俺の手は止まってしまった。
急に心臓の脈数が速なったような気がする。耳鳴りもし始めて頭が痛い。
俺の異変に気づいたのか、篤志もその資料を盗み見て、苦虫を噛み潰したような顔をした。
「マジかよ。これ」
「本当だろう。大林課長が資料を間違えた事は一度もないし」
「俺、課長がボケて資料を間違えたに缶ビール一本」
「辞めとけ。お前が負けるのは確実だろ」
「酷い雅斗! 私が…私がせっかく賭けを持ちかけたのにそれを突っぱねるなんて……あなたは、私の事が嫌いになってしまったのね!!」
シクシクと嘘泣きを始める篤志。それを見た途端、俺の気分は急激に悪くなった。
辞めろ。気持ち悪い。さっき食べた昼食、吐き出しそうになるから止めてくれ!!
心の中の叫びが聞こえたのか、篤志は嘘泣きを止めてくれた。
「まぁいいけど……それより雅斗」
「なんだ?」
「課長から、『記憶の中に埋め込まれてる氷が桜と共に砕け散る』だってよ」
「なんだそれ」
「さぁ?」
俺は、本気で分からないって表情を作る篤志を見て溜め息をつく。
つまり、これは大林課長の予言だ。課長の予言は必ず当たるが意味がわからない事が多い。というか、分かった方が凄い。ちなみに昔、扱った件で俺は予言は貰ったことがある。
たしか『黒が白を呑み込むとき、大地の中よりそなたの望むもの現れる』だったような……。
最初、それを聞いたときはなにがなんだか分からなかった。けど、確かに黒が白を呑み込む。つまり、新月の日に地面から獲物が現れた。