桜の記憶
□アイディア
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アイデア
「もしもし」
『雅斗君。久しぶりですね』
「そうですね」
半ば投げやりに返答を寄越す。みかんのお礼はあるが、それとこれは別だ。
『みかん。そちらに届きましたか?』
「はい。現在進行形で美味しくいただいています」
『それは、良かったです』
「で、用はみかんが来たかの確認だけですか?」
『いえ。もう一つ。暫くの間、織也の家に居候させて貰いたいんですけど』
「……は?」
俺は素っ頓狂な声を上げる。一貴さんが俺の家に居候?
「なんでまた」
『実は、ある理由で雅斗君の学校で臨時の養護教員になることになったんです』
「へ……?」
『だから暫くの間、織也の家に泊めて貰おうと思いまして』
「……」
俺は激しい脱力感を感じた。あの変態一貴さんと同居なんて先が思いやられる。
それに……なんだか嫌な予感がする。一貴さんに会ってはいけないというか、会ったらとんでもない事に巻き込まれそうななんとも言えない不安。
どうすれば良いかなと悩んだ俺の頭にピンと1つのアイデアが浮かぶ。……篤志には怒られそうだが仕方ない。
俺はニヤリと笑いながら、口を開く。