夢への架け橋

□変態の対処方法
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 夏よりも深みを帯びた青が広がる秋空の下。毎日口にしているその言葉は、怒声混じりで私の口から飛び出した。


「こぉんの変態!!」


「ぐふぅ!」


 教科書が詰まった鞄のしかも角を使いの右フック。それを受けた彼は数メートル飛び、地面へと倒れた。が、数瞬後には女の子が黄色い声をあげそうな笑顔と共に起きあがる。ある意味、すんばらしい生命力だ。もう、人間辞めて頭文字Gの生物になれば良いと思うよ、本当に。


「いや〜、今日も良い右フックだね。環ちゃん」


「私は、なんでそうもすぐに復活できるのかが不思議でならないんだけど。と言うか、この前、引ったくりにこの右フックお見舞いしたら、1時間位伸びてたよ」


「やっぱ、愛の力じゃない?」


「マジで死んで下さい」


 キラーンと言う効果音が聞こえてきそうな奴の顔面に反動を付けた鞄をもう一度打ち込むと、私はさっさと校門をくぐり抜けた。


 私の名前は渋谷環。ちなみに、今度こそ伸びたあの変態は、伊集院翼。私の天敵&勉強面でのライバルだ。


 あいつのフォローをするのは凄く不本意だが、彼の成績は、成績優秀、運動神経抜群。顔は、テレビで出ている芸能人なんかよりも整っている。


 さらに付け加えると、この国で3本指に入る超お金持ちの伊集院財閥のご子息だ。


 まぁ、あのアホの説明はこんくらいにして、私の学校の説明をしておこう。


 私の通うこの長嶺高校は、学問重視の学校のせいか、成績が良いと学費免除だけではなく、学食無料とか、教材を全て支給してくれるなどとても嬉しい特典がついてくる。


 私はそれを狙ってこの高校を選んだ。一応、あいつとは1、2を競える実力があるお陰で、学費は全部免除してもらってるし、学食、教材費等も全て無料だ。


 勉強は大変だけど、やりがいがあるし、友達も良い人ばっかりだし、ここを選んで良かったと本当に思ってる。


 あいつにさえ、いなければ……。



 
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