真紅色の育成日記

□知らぬ間に結ばれた絆
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「アッシュ〜迎えに来たぞ〜」


 閉店の作業を終わらせた俺は、柏原家に預けてあるアッシュを引き取るため柏原さんと一緒に家に向かった。が、出迎えてくれたのは、シーと唇に人差し指を立てた流。


「アッシュは?」


「梓と桃と寝てる」


「そうか」


 今日はいつもより遅くなったから、待ちきれなかったのだろう。アッシュには迷惑ばかりで本当に頭が上がらない。


「なら、連れて帰るよ。何処で寝てんの?」


 桃の部屋かなと検討付けて家に上がろうとした瞬間、ぶんぶんと流が首を横に振る。


「アッシュ、連れて帰るダメ。桃、起きたら泣き出す」


「……それは連れて帰れないな」


 桃の泣き声はかなり凄まじい。しかも、 なかなか泣き止んでくれないのだ。その原因になるのだけは勘弁したい。


「なら、奏くん。今日は泊まってきなさいよ。久々に話がしたいし」


「けど……」


「泊まる、良い。俺も奏に、勉強教わりたい」


「流もこう言ってるし」


「そうだな……」


 アッシュも無理矢理起こすのは可哀想だし。明日は特に用事は無いしな。


「泊まってく。けど、服はあるの?」


「この前、泊まった時の、ある」


「それが駄目なら流のを着れば良いわよ」


「お前、俺よりもデカいもんな」


 そう言いながら、隣に立っている流を見る。


 流は俺よりも4歳も年下なのに頭一つ分も身長が違う。ちなみに身長を抜かされたのは中学生の頃。


 成長期で背が伸びていたにも関わらず、小学生の流に抜かされたと言う事実に、俺はかなりしょげた記憶がある。


 まぁ俺も、もう大人だからそんな事は気にしてないけどな。


 ……羨ましいという気持ちはあるわ、この野郎!


「まぁ、取り敢えず夕食にしましょう。流は食べた?」


「まだ。さっきバイト、戻ってきた。梓達は食べた。メモあった」


「じゃあ、軽く何か作りますか」


「俺も手伝います」


「奏はビール買ってきてくれない? 久々に飲みたいし。あと、家にいるときは敬語使わないの。約束でしょ」


「……うん」


「じゃあ、よろしくね」


 そう言って柏原さん。じゃなかった、母さんは台所に行ってしまう。


 あ、先に言っとくけど、俺は柏原家の人達と血は繋がっていない。


 けど、この人達は家族以上の存在だと思っている。じゃなきゃ、幾らバイト先の人だって、アッシュを預けるような事をしない。


 まぁ、話すとは長くなるからこの話はまた今度と言うことで。


「そんじゃ、行って来ます」


「奏、俺ピザまん」

「じゃあ私肉まん」

「……ちゃっかりしてんな。分かった。買ってくるよ」


 溜め息混じりでそう言いながら、俺は家を出る。


 外は相変わらず寒かったけど、心はとても暖かかった。



 
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