桜の記憶
□白の化身?
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白の化身?
俺の高校は4階建ての東棟と5階建ての西棟の2つの校舎が廊下で繋がるように作られている。
ちなみに俺達のクラスは西棟の3階。保健室は東棟の1階の一番奥にある。
「歩……。本当に平気か?」
一番最初にあった時は元気が有り余る程あった歩だが、今はぐったりとして話しかけても空返事しか返って来ない。しかも、寒いのかガタガタと体が震えている。
(化け物の妖気みたいなのに、あたったのか)
心配になった俺は首から下げてる退魔用の紅い勾玉を、歩の首から掛けてやる。歩は不思議そうにその勾玉を眺めた。
「雅斗。これは?」
「おまじない。しばらく身につけてろ」
「サンキュ」
「気にすんな……ほら付いたぞ」
俺は保健室のドアをノックして、そっと扉を開けた。
一貴さんは……いないらしい。その事にほっと息を吐きながら歩を中に入れる。
「先生は?」
「いないみたい」
「なんだ。カッコイイって聞いてたから見てみたかったのにな……」
「いや、会わなくて良いと思うよ。マジで」
そう言いながら俺は歩を見る。退魔の勾玉をつけたせいか、歩の顔色はさっきよりも良くなっていた。
ほっと息を吐きながら俺は歩をベッドに寝かす。
「保険医に何かされたらすぐに電話しろよ。音速で駆けつけるから」
「なら先生来るまでここにいろよ。……心細い」
歩の言葉に俺は目を見開く。歩はいつだって明るい。大切な人が亡くなっても暗くなった人達を励まそうと明るく振る舞っている姿を俺は見たことがある。自分も悲しいのに笑ってなんか明るくなんか出来ないはずなのに。
こいつは周りの為にいつも明るい。どんな奴でも歩の近くにいると笑顔になれる。歩はそういう存在だ。
けど、今の歩からはそんな明るさが見えない。まるで出会ったという化け物に持ってかれたように。
俺は白くなる程、強く手を握る。けれど、顔には笑みを浮かべた。歩を不安にさせてはいけない。わざと何時もの口調で歩に返事をする。