桜の記憶
□蘇る記憶
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「な!!」
俺は目を丸くした。いきなり窓のガラスが割れたと思ったら黒い犬のようなモノが保健室に入って来たのだ。
それはベットに寝ている歩を包み込む。俺はその犬のようなモノを見た瞬間、背中を氷の手で撫でられたような錯覚を起こした。
あの犬の正体が分かったのだ。あれは……。
「闇の……塊!」
あのままじゃ歩が危ない。そう思った俺は桜花を出し、歩を包み込む闇を切り裂こうとした。しかしその前に闇が弾け、中から歩が姿を現した。
良かった。外傷は無いようだ。俺はほっとして歩に近付こうとした。だが何故か篤志に肩を掴まれた。
「どうした篤志?」
「雅斗。あいつに近付くな。なんか可笑しいぞ」
おかしい? なにが? そう思い歩を見ていると彼はベットから起き上がりクツクツと笑い声を上げる。
「人間の体はあまり好かんがこれもこれで良いな」
「……誰だ」
俺は桜花を構えながら歩に訊ねる。正確には歩の中に入っているモノに。
それは溜め息を吐きながら口を開く。
「誰って。お前、本当に記憶がないんだな。俺は窮奇。藤貴の式神だ」
「藤貴……」
「藤貴も覚えてないのかよ。お前を創った奴だ」
「創った?」
何の事だ? 俺は眉をしかめた瞬間、ずきりと頭が痛む。その時、浮かんだのは誰かの声。