桜の記憶
□最後の決着
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「桜花。俺達、会ったことがあるか?」
「それも忘れているのか……。まぁ、じきに思い出すだろう。ここはそなたの全てを記した真実の空間なのだから」
桜花はすっと手を上げると、俺の額を指で触る。その顔は真剣そのもので、俺ってこんな顔も出来るのかと場違いな事を考えてしまった。
「全てを思い出せ雅斗。まだそなたの記憶は全て溶けきった訳ではない。藤貴がそなたを封印するきっかけを与えた事件。そなたの中に妾が生まれた理由。そなたが何故闇に捕らわれ続けているのか……。
全てを思い出せ。そして、その先に運命を変えるも変えないも、そなたの手の内に」
俺は自然と目を閉じる。瞬間、桜花が微かに笑ったような気がした。
「そなたが選んだ選択が、真の意味での幸せに繋がる事を祈っている」
妾はそなたであり、そなたの守護花なのだから……。
「ありがとう」
毎回、迷惑をかけてごめんな。そう呟いた俺の声は音にならず、闇の虚空へと消えていった。