桜の記憶
□紅い右目
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紅い右目
「う……」
俺はそっと目を開ける。そこには見慣れた天井が広がっていた。それが俺の部屋のやつだと気付いた俺はかばりと起き上がろうとして……再度、布団に倒れ込んだ。
「あったま、いて〜」
頭の中で鐘が鳴ってる。なんか二日酔いになるとこんな感じなのかなと思いながらうずくまっていると慣れ親しんだ神気が俺の横に降り立つ。
そちらに視線を向けると心配そうに顔を歪めた鳳凰の顔があった。
「雅斗、大丈夫?」
「大丈夫」
そう言いながら鳳凰に向かって笑みを浮かべる。迷惑かけちゃったなと思っていると、彼女が申し訳なさそうに口を開く。
「ごめん。窮奇から歩の体を取り戻す事が出来なかった。今、麒麟が窮奇の神気を追ってる」
「そうか……」
まぁ、窮奇の逃げ足は速いからな致し方ない。俺は溜め息を吐いた後、鳳凰を見る。
「麻斗達は? あと、なんで俺は自分の部屋で寝てるんだ?」
「麻ちゃん達がここまで運んでくれたの。で、麻ちゃん達はおりっちと話してるよ」
「場所は?」
「客室」
それを聞いた俺はゆっくりと体を起こす。まだ少し頭は痛むがこれ位、どうって事はない。
「麻斗達の所に行く」
障子を開けた俺はふと、部屋にある姿鏡にかかっていた布を取る。鏡に映った自分の姿を見て俺は軽く目を見開いた後、そっと鏡の中に移る自分に触れる。
正確には真っ赤に染まった紅の目を。
「禁忌を犯した者に与えられる印……」
ぼそりと呟いた後、鏡に布をかけ直した
俺は麻斗達がいるという客室に向かう。
麻斗達に自分の過去を伝えるために……。