桜の記憶
□思い出の桜
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「邑輝が2人……?」
密の呟きにあぁそう言えば一貴さんと藤貴は似てるなと思う俺。まぁ、血は繋がってるから有り得そうだけど。
「あれは一貴さんじゃなくて藤貴だよ」
「あれがお前を創った奴なのか?」
「そうです」
織也さんの言葉に頷いた後、俺は桜花を出す。すると今まで何も発しなかった藤貴が口を開いた。
「この空間でも桜花を使えるようになったのか」
「数百年振りの再開の第一声がそれって酷くないか?」
「私はずっと雅斗を見ていたからな。あまりその様には感じない」
「そうかよ。……まぁ、良いや。それよりも歩を返せよ」
桜花を構えながらそう言うと藤貴の掌から大きな光の玉が生まれる。その中には1人の少年が閉じ込められていた。
それは苦悶の表情を浮かべた歩。俺は歩の姿を見て、はっと思い出す。ここは何も能力を持たない一般人とっては毒になる環境だと。
「お前が渡した勾玉がこいつのことを守ってるみたいだが、速くしないとこいつは死ぬぞ」
すっと、藤貴が玉に触れた瞬間、歩は苦しそうに叫び声を上げた。それを聞いた瞬間、俺は藤貴との距離を一気に詰めて桜花を振り下ろす。
しかし、それが藤貴に届くことはなかった。