桜の記憶
□砕けた氷
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真の敵
ざくっと言う音と共に飛び散る紅。俺はそれに目を見開き……震える唇で疑問の言葉を投げ掛けた。
己に刺さるはずだった刃を自ら受け、血だらけになっている藤貴に。
「な……んで」
「大切な子供を守るのに、理由など必要ですか?」
言った瞬間、ごほりと血の固まりを吐き出す藤貴を俺は支えた。
涙が溢れて止まらない。なんでだか分からない。けど、まるで決壊したダムのように次から次へと涙は溢れ出てくる。
藤貴は泣き続ける俺を見て目を見開いた後、苦笑を浮かべる。
「まさか、雅斗に私の死を悲しんでもらえるとは思ってもみませんでした」
「煩い! 勝手に涙が出てくるんだよ!!」
ごしごしと服の袖で涙を拭っていると藤貴がそっと手を伸ばしてきて俺の涙を拭ってくれた。
その行動にまた涙が溢れ、俺はそれを見られないように藤貴を抱き締める。瞬間、驚いたような気配と共に頭を撫でられた。それが昔の藤貴を思い出して悲しくなる。
「そう言えば……何故私が雅斗を封印したか言っていませんでしたね」
「そんなの俺の力が欲しかっただけだろ」
みんなそうだった。不老不死であり治癒能力が格段に早い鬼の体。皆、それが目当てで俺に近付いてきていた。きっと藤貴もそうだったんだろう。
しかし、藤貴は予想外の言葉を口にした。