桜の記憶
□始まり
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十王庁。召喚課。
「おっはよ〜」
「おはようごさいます……じゃ、ありません!! 都筑さん! あなた何時だと思ってるんですか!?」
にこにこと部屋に入ってきた都筑に巽はガタンと椅子から立ち上がる。何時ものように遅刻してきた都筑に今日の巽は怒り爆発だ。
いつもより機嫌の悪い巽に都筑は驚きながらも、頭に生やした犬耳を伏せて言い訳を試みる。
「だって〜」
「言い訳は結構です。すぐに京都に行って、この仕事を黒崎君と片付けてきて下さい」
巽はドン、と都筑の前に仕事用の資料を置く。それを見て都筑は目を丸くした。
「巽。これ厚すぎないか?」
資料の厚さは約20センチ前後。それは、都筑が扱った過去の最高枚数をゆうに超えていた。
巽はため息を尽きながら、席に着く。
「被害者が30人もいるのですからしょうがないでしょう」
「30って、なんでそんなになるまで放って置いたんだよ!!」
都筑の叫びに巽は言いよどむ。これに関しては色々とあったのだ。
「実は、呪詛課の方と揉めまして、許可を貰うのが極端に遅れたんです」
「呪詛課? なんだそれ?」
首を傾げている都筑に、雑務をしていた密が呆れながら突っ込む。
「……おい都筑。呪詛課を知らないのか?」
「密、知ってるの?」
「当たり前だ。呪詛課は人間が手に負えない呪詛や呪術的なモノを回収する課だ。けどなんで呪詛課が首を突っ込んできたのですか?」
「それが私にも分からないんです。ですから、都筑さんと黒崎くんはその事についても少し調べて下さい。ちなみに、今回は潜入調査になるので気をつけて下さい」
「分かりました。都筑行くぞ」
「あ、待ってよ密〜」
二人は慌ただしく召喚課を後にした。