桜の記憶
□プロローグ
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プロローグ
夜。新月のせいか、普段よりも暗い夜道。そこに影の中で蠢く何かがあった。
その何かの下に少年がいる。少年の手足は、力無く伸ばされ、ピクリとも動かない。
しばらくすると、何かはゆっくりと少年の上から退いたので、何かの全貌が明らかになった。
それは、まるで黒い毬藻のよう。たが、その中心には人の顔があり、まさしく化け物という形容がしっくりくるモノだ。
化け物の血の気のない青い唇からは、何か淡く光る塊が垂れ下がっている。
それは、先の少年の魂。この化け物は少年の魂を喰らったのだ。
化け物は、その塊を飲み込むと、にたりと唇に笑みを浮かべた。
「もうすぐだ……もうすぐ私と雅斗は一つになる」
堪えきれなくなったのか、その化け物は大声で笑い始める。
それは、なにかの呪詛のように恐ろしく、だがはっきりと暗い闇夜に木霊したのであった。
→あとがき