桜の記憶

□夢
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「ただいま」


 黒崎の家から帰ってきた俺は、自分の部屋の襖を開ける。するとなにかが俺に抱きついてきた。


「雅斗♪」


「うわ!」


 俺はそのなにか。朱髪の少女に抱きつかれて思いっきり尻を打った。


「いっつ〜」


「大丈夫か。雅斗」


 俺は声がした方を見る。そこには、部屋にあるこたつでみかんを食べていた青年が俺を心配そうに見つめていた。


「まぁ、いちよう。尻は痛いけど」


「なら良かった」


 そう言ってふっと笑う青年。それがあまりにも似合い過ぎて同性の俺もドキリときました!

あ、こいつらの自己紹介してなかったな。


この二人は俺の式神。あの先生が使役している12神将と同じようなもの。


 ちなみに、肩につく程度で揃えられた朱髪に夕日のような紅の瞳のが鳳凰。いつもは白い手足が丸見えの唐紅の衣だけだが、今日は寒いのかそれの上に赤い半纏を羽織っている。(ちなみにこれは俺のやつ)


 黙っていれば美人さんだが喋り出すと煩いったらありゃしない。


 次に、腰まである金髪に海のような蒼い瞳の奴は麒麟。服装は鳳凰と逆で丈の長い藍色の衣。


 ちなみに性格も鳳凰と真逆で落ち着いていて冷静。まぁ、たまに冷たく切り捨てたりとかするけど根は優しいんだよな。


 鳳凰も同様に俺の事を大切にしてくれる。二人のことは式神ではなく、家族同然のように過ごしてきた。これはなにがあっても変わらない絆だと俺は思っている。


 俺はまだ抱き付いている鳳凰を引きずりながらこたつに入った。


「あったけ〜」


「みかん、食べるか?」


「おっ、サンキュー」


「私も食べる!」


「鳳凰はさっき10個も食べただろ」


「雅斗と一緒に食べたいの!!」


「はいはい」


 はぁ、とため息を尽きながら麒麟が隣にある大きめのダンボールからみかんを2つ取り出し俺と鳳凰の前に置く……って。

「そのみかん入り段ボールどうしたんだよ」


「さっき、織也が持ってきた。友人からこれが10箱ぐらい送られてきたみたいだぞ」


「それは、嫌がらせか? それともその友人の家がみかんを作ってんのか?」


「送り主は一貴だ。多分、前者だろ」


「一貴さんがねぇ〜」


 どういう心境でみかんなんか送って来たんだ?


 う〜ん。と頭を捻りながらみかんを食べる。ジワッと口に広がる果汁多さに俺は驚いた。さすが坊ちゃん。良いみかん送ってきましたね〜。


「そう言えば、後どれ位残ってんだ?」


「店の奴には全員配ったっていってたが、まだ3箱ぐらい残ってるって言ってたぞ」


「なら明日、学校に持ってくか。丁度、転入生と新任教師がきたし」


「それって、雅斗が言ってた召喚課の2人?」


「そ、それに俺のクラスでみかん嫌いな人いないし」


「そうだな。そうすればみかんも減るし、織也も喜ぶんじゃないか?」


「よし、そうと決まったら俺、織也さんに聞いてくるよ」


「おりっちなら店の方にいるよ♪」


「分かった。じゃあちょっと行ってくる。織也さ〜ん!!」


 嬉しそうに廊下を走っていく雅斗に鳳凰と麒麟は苦笑する。


「雅斗は本当に織也の事が好きだよな」


「雅斗にとっておりっちは親みたいな者だもの。何年経ってもあれは変わらないよ」


「そうだな。それじゃ、寝る準備をするぞ」


「あ、後もう1個みかん食べさせて」


「お前は食い過ぎだ!!」


 麒麟の怒鳴り声が離れに響いたのは言うまでもない。
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