鋼の小説

□紅蓮転生1
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またあれから数年たった。錬金術の研究を積み重ねていくうちに、すっかり大人になったキンブリーは、それなりに不自由なく育ち、気ままに暮らしていた。

錬金術に関しては『爆弾を作る』という錬金術を完成させることができた。
そしてあの時白い物体が与えた能力のうち『錬成陣なしで錬金術を行う権利』の意味を理解したおかげで、錬成陣なしで錬成することができることも発見した。キンブリーとしては何の障害もなく、うまく事が運んだ結果となったため、非常に充実した月日であった。

そんな月日を経た彼は今、自分を尋ねた客の姿を見て、盛大に眉を寄せていた。



「・・・・・・軍人が私に何のご用でしょうか?」



いたのは青い軍服を着た偉そうな男性二人、まぎれもなく軍人だ。
この歳になっても、軍はいまだに大きな権力を持っている。元々そう言う俗物的なものが好きではないキンブリーにとっては、一番関わりたくないものだった。だから軍に関わることのないように暮らしてきたのだが・・・何故か目の前には、その関わりたくないものが来てしまっていた。

軍人はキンブリーを見ると、綺麗な姿勢を保ったまま、キンブリーに話しかけた。



「突然失礼。こちらに『ゾルフ・J・キンブリー』という方は、おられますかな?」



「いません。留守です。」



関わるのが嫌なので思い切りうそぶいた(笑)。後ろの小さな軍人が困ったように頭をかいた。



「うわぁ・・・タイミング悪かったみたいですね;グラン中佐;」



「・・・・・・・・・」



グラン中佐と呼ばれた、程よく焼けた肌の男は、黙ったままキンブリーを見つめる。キンブリーはそれにひるむことなく、人のいい笑みを向けた。



「もうしわけありませんねぇ・・・丁度今、出かけてしまったんです。帰ってくるのは夜ごろになると思います。」



「いえ、こちらも突然でしたから・・・。帰るまで、近くの宿で待たせていただきます。」



「そうですか。では、帰ったらお伝えいたします。」



そのまま小さな門を閉めて、家の中へと歩き出した。途端、後ろで何か、大きな音が響いた。



「!!」



それに殺気を感じたキンブリーは、振り返りざまに手袋をはずし、手に彫ってある錬成陣で素早く爆弾を錬成。目の前に来た無数の武器らしきものを破壊した。爆発の後、目の前には爆発によって破壊された瓦礫が散らばった。



「・・・いきなり後ろから攻撃とは、軍人は礼儀も知らないのですか。」



少々いらだち気味に目を細めて言った。この攻撃を行った、グラン中佐はニヤリと口元をゆがませた。



「・・・やはりお前がゾルフ・J・キンブリーか。人をたばかるとは、感心せんな。」



その言葉に、キンブリーは言葉に詰まってしまい、視線をそらした。隣の小さな軍人は呆気にとられたのか、口を開けたまま固まっている。グラン中佐は破壊された門をくぐり、キンブリーの前に立つ。



「キンブリー殿・・・貴方の錬金術、しかとこの目で見せて頂いた。・・・話を聞いていただこう。」



「軍人と話すことなんかありません。帰ってください。」



とことん関わるのを拒否するキンブリー。しかし、次のグラン中佐の一言で、受け入れざるを得なくなってしまった。



「そうか。なら・・・中央にいる貴方の御両親の保証はしかねますな。」



「・・・民間人を人質にする気ですか?」



これにはさすがに、あからさまな怒りを見せた。それを知っていて尚、グラン中佐はうろたえることなく息を吐いた。



「こちらも必死なのだよ。色々な・・・」



どうあっても引いてくれそうになかった。キンブリーは怒りをむき出しにしていたが、仕方なく、二人を家の中へ招き入れた。
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