砂漠の文

□極・借金地獄(序章〜)執筆中
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「サーさ〜ん?いるんでしょ?いい加減払ってくれませんか〜?」





今日も聞こえる、吐き気がするような甘ったるい声と、扉をガンガン叩く音・・・
壊れる勢いで叩かれる小さなアパートの扉の奥。そこに、疲れ切った顔をした、汚れた服を着たオールバックの男が座っていた。顔にある傷はヤクザか何かを連想させるが、彼の自信が喪失したその表情がその連想を打ち切らせる。



(金・・・か。)



叩かれる扉の音を聞きながら他人事のように考えていた。
男、サー・クロコダイルは、元は一会社を納める大企業の社長だった。しかし、自らが侵していた裏取引の罪を公にされ、家を潰され、全てを失った。以来、部下への支払いを含め、ある金利会社から金を騙し借りた。結果、借金は利子も含んで倍近く膨れ上がり、借金取りに追われることになった。今扉を叩いているのはその借金取りである。



(ここまで逃げてきたが・・・)



当初はクロコダイルもそのプライドの高さが災いし、借金取りに捕まるまいと今まで逃げていた。しかし、身体的にも精神的にも疲労した状態が続いた今、その気力はすでに失せている。



(金を払い切る・・・なんて、今考えれば夢物語だったな。)



ちまちまとした商売では、借金の利子の半分を払うのが限度だ。膨れ上がる借金は、もういくらになるか忘れた。



「・・・ばからしい。」



呟いた途端、扉が壊れ、ニメートルはある大男がでてきた。



「みぃつけた!」



金髪に奇特なサングラスをした男は、楽しそうにクロコダイルに歩み寄る。目の前に来ると同時に、締めるいきおいで首を捕まれた。



「うっ!」



「散々手間かけさせたんだ。ここできっちり払って貰うぜ?うちから借りた総額、占めて五億三千万ベリーだ。」



クロコダイルは眉を寄せた。そんな大金を、こんななりをした男が持っているとでも思っているのだろうか。



「・・・払え・・・ません。」



絞り出すように呟くと、金髪は「だろうな。」と言ってクロコダイルを床にたたき付けた。



「がはっ!!」



「ならきっちり働いて貰うしかねぇよなぁ?あ?」



低い声で言われて身の毛がよだった。この男は怒らせたら命がない。本能で理解した。
クロコダイルは男から視線をそらした。



「・・・仕事って・・・なんだ?」



雑用ならまだいい。臓器提供や奴隷、人体実験の被験体・・・嫌な想像ばかりが頭で渦巻いた。男は上機嫌になりながらクロコダイルの頬を撫でた。



「やる気はあるんだな?いい心掛けだ。・・・そう心配しなくていいぜ?こいつは中々高額だし、痛くねぇ仕事だ。」



クロコダイルは目を開いた。そんな都合のいい仕事など考えつかなかった。しかし、次の言葉でクロコダイルは絶望に叩き落とされることになる。



「お前の顔、綺麗だからなぁ?今までより、かなりいい取引が可能なるはずだ。」



「な、に・・・?」



顔がみるみる青ざめる。まさか、と思いたい。男で、しかもこんなに歳の行った自分が、その方面に足を入れることになるなど、思いたくなかった。



「待て・・・そんな・・・」



「できねぇとは言わせねぇ。実は、すでにテメェの借金はおれが払いきってんだ。つまり・・・お前は今、おれに全額借金してる状態ってわけだ。」



拒否権はない。今の自分が、この男の所有物であることは明らかだった。



「おれはドンキホーテ・ドフラミンゴだ。今日からお前の主人になる。お前にはおれのために、その身体を開くんだ。毎日なぁ?」



「あ・・・な・・・」


涙を流すクロコダイル。男、ドフラミンゴはそんなクロコダイルを担ぎ上げた。



「さぁ行くぜ?楽しいライフのはじまりだ!フフフ、フフフフフ!」



ドフラミンゴが車に入る。中に押し込まれたクロコダイルは呆然としながら、二度と拝むことがないであろう、古びたアパートを車から見つめていた。




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