氷原の雪姫

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目の前の彼女は確かにこう言った






『桜月隊隊長の朽木桃葵です。』







どんなときでも笑っている彼女の初めて見る無表情


















「何の冗談だ、桃葵?」





『黙っていて申し訳ありませんでした。』







自分の義理の兄である白哉に頭を下げる







「確かに兄の実力はこの場にいる誰もが知っていることだ。

だが」






『私の実力は確かにこの地位に価しているのかは私にも分かりませんが
この数年間、十番隊三席と兼任しても桜月隊隊長としての任務を全てこなすことは出来ました。』





言葉には出していないが
これ以上口答えするな、という意志が現れている









「勿論、我等が桜月隊は護挺十三番隊の仕事を横取りするようなことは一切ありませんし
共同任務などの類いも一切ありませんので御安心を。」






副隊長の東雷斗が隊長を護るかのように前に立ち塞がる









「では、お披露目はこれぐらいでいいですか総隊長殿?」







「あぁ、構わん。」






「それではこれで失礼させて頂くわ。」





三席の西園寺凪を筆頭に
隊員達は順番に部屋を後にする



















「ちょっと待てェ!!」






最後の桃葵が庭に降りたところで更木が呼び止めた






『まだ、何か?』






「最近とんと殺りあってなかったしな。

実際に確めてやる………。」








更木はその次の言葉を言うことは出来なかった














ポツッ




















地面に滴り落ちる赤い血

















喉仏に刺さるは荊の棘














「そっからあと一寸でも動いたら一生口で息できなくなっちゃうよっ♪」





更木がゆっくり目をあげると
大分前を歩いている自分の隊だった常葉緑花が刀の切っ先をこちらに向けている








「つぎ桃葵たいちょーに刀向けたら
今度はお腹の中から綺麗なバラが咲くかもねっ!!」




声色と口調はあどけないものだが目が笑っていない










『緑花、もういいから。』






「ほーい!」







鞘に終われると同時に荊も姿を消す



















「桃葵っ!!」






一瞬彼女は歩みを止めた














けれど振り返ることは決して無かった







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