短編!

□消えてくれない夕焼けと君
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「消えろよ。」
何度も君に言ったけど、君は、いつも。

→とある二人の男のお話

「なあ、消えろよ。」

いつもの様に俺は放課後の教室で、自分の席に座りながらこう君にそう吐き捨てる。
だけど、君はにこにこしながら「聞き飽きたよ」、なんて言うんだ。
俺は、その笑顔も大嫌いで、いつこいつが死ぬのか、いつもそんなことばかり考えていた。

「本川は、なんで俺に死んでほしいんだ?」

眉間に皺を寄せて笑う顔。初めて見た顔、初めての質問。
少し吃驚しながら、俺は俯いた。

「…いいから、そんなの言うところも消えてほしい。」

「…そっか、」

すると、いきなり立ち上がった君は、窓がら身を乗り出した。
俺は、何してんだよ、と叫びながら君に近づく。

「え、消えるんだよ。」

「だから、何でだよっ!」

「消えてほしいんだろ?」

「ほしい、けど…っ!こういうのはなんか違う…っ!」

「何で?俺はお前が望んでることなら何だってするよ。」

「……………………なん、で?」

俺は顔をぱっと上げ、こっちを見ている君の目を見た。

「好きだからだよ。」

「…っはあ!?」

「俺、お前のこと好きだからだよ。」

「…。」

「俺の名前を覚えなくても、お前って呼ばないところとか、
綺麗な顔立ち、俺より小さい背、性格、何もかも好きなんだよ。」

「ホモ、かよお前。きっしょ…気色悪い。」

「いいよ、気色悪くて。」

にっこり。綺麗に笑うその顔も大嫌いだ。
俺は、いつだって君のことが嫌いだった。
誰にでも好かれる性格、整った顔、俺より大きい背、何もかもが。
いつもいつも君の言動が気になって、気になって仕方なかった。
俺より優越で、人気者の君。
(でも、そうか。そうだったんだ。)

「俺も、……もしかしたら…お前が…好き、なのかもしれない。」

「…曖昧だな。」

クスクス笑いながら、俺の頭を撫でる。
何故か涙が流れる、君は俺を抱きしめる。
夕暮れが綺麗だった。グラウンドで走る野球部の声は五月蝿かった。

「なあ、名前なんだっけ。」

「上村です。覚えてね。」

「……忘れねえよ、もう絶対。」

「消えろって言わない?」

「…っ消えろ。」

「ははっ、つれねぇな。」

初めてのキスのあと、俺は小さく消えろ、と言った。
君は笑いながらもう一度キスをした。


(消えなくていいよ、)(いや、絶対に消えないで。)

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