短編!

□皮肉教師は自由を捨てる
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僕に何もかもを教えてくれた憎き君は、きっと、きっと、僕だった



童話が好きだった。童話に自分の「自由」を詰め込むのはもっと好きだった。
でも、背が伸びるにつれて、それは「いけないこと」だと僕は知ってしまった。
「自由」を「いけないこと」と決めたのは大人だったけど、
「いけないこと」と知ってしまったのは誰でもない僕だった。

教卓の上でただ喋り続ける大人は、夢のつぶし方、地図の閉じ方ばかり教えてくれて、
結局僕の思い描いた大人は汚れた黒でしかなかった。

夢のつぶし方を覚えた僕は、もう自由を描くことなんて出来なくなってしまった。
ただただ毎日頭を下げたり、愚痴を聞いたり。
結局僕の思い描いた未来は汚れた黒でしかなかった。

久しぶりに部屋の掃除をしていると、ひらひらと何枚もの紙が落ちてきた。
僕の好きだった童話と、僕の描いた自由がそこにはあった。
懐かしさ、悲しさ、色々のものが胸から溢れてきそうになったのを僕は我慢して、
ぐしゃぐしゃにしてその紙をゴミ箱に投げ入れた。

ハッピーエンドの御伽噺に、自由と夢ともしもを加えたのは僕だった。
だから、自由と夢ともしもを奪ったのは、紛れも無い君だと思っていたんだ。

「こんな大人にしてくれてどうもありがとう。」

「いけないこと」と知ってしまった僕は、
夢のつぶし方を教えてくれた僕は、
大人を恨んだ僕は、
自由を描けない僕は、そうぽつりと呟いた。



(きっと、きっと、君だった)
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