短編!
□架空恋愛症候群
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愛することに疲れた俺は、一人の人間を愛することにしたのでした。
→とある男の話
「おはよう、愛。」
彼女の名前は愛、俺の名前は優。
優しい愛、俺はこの言葉が好きだ。説明する必要は無いだろう。
「ねえ、愛、空が綺麗だよ。」
俺は、可愛い愛を外に出したくない。他の男にナンパされたりしたら、俺、そいつを殺しかねない。
「愛、朝ごはん食べようか。」
「うん。」
朝ごはんを食べる俺と愛。愛に美味しい?と聞くとうん、と愛は答える。
愛、愛、愛、愛、俺の愛。
「愛、何か買ってきてあげようか?」
「要らないよ、もう十分。」
困った顔で笑う愛はとても可愛らしい。愛の笑顔が俺は大好きだ。
「愛、欲しいものは無い?」
「無いよ、もう。」
「愛、何でもするよ。」
「本当?」
「本当だよ。」
「じゃあ、ここから出して。家に帰らせて。」
「駄目だよ、愛。愛は俺だけのものだから。」
テレビから聞こえる機械的に情報を伝えるアナウンサーの声。
『数日前、高校1年生の上田愛さんが行方不明になった事件で―』
サイレンの音が聞こえる。愛の悲鳴が聞こえる。ナイフが赤く染まる。
駄目だよ、警察にだって愛をあげるもんか。
ねえ、愛、いつまでも愛してるよ。
愛の血と俺の血は同じ色だった。それだけで十分だと思った。
架空恋愛症候郡
(僕らはその日、)(肉の塊となってニュースで流れた)