100のお題

□G59
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我輩の名前は『G59』である。
名前は、まだ、無い。

(文章がおかしい?文章って、何?)

「ハカセー!ハカセーッ!」

ワタシの名前は、まだ無い。
でも、ハカセ達は、G59と呼んでいて、時々「じごくちゃん」と呼ばれる。
その呼び名がワタシは大好きだ。じごくちゃん、じごくちゃん。

「どうしたんだい、G59。」

「あのね、ワタシの毛抜けちゃったよー!テイキケンシンまだしてないからじゃない?」

「あっ!」

ひらひらと白衣を唸らせて走るハカセ。ワタシは、ハカセのことが大好きだ。優しくて、かっこいいからだ。
ハカセも、ワタシの事が好きだといいなあ。
ワタシは抜けてしまったブロンズの髪を見つめながらそう思った。アオ色の瞳を光らせて。

ワタシはハカセの理想の女の子を形にしたものだと話された。
ブロンズの髪、アオ色の大きな瞳、白い肌、小さな身長、細い体。
体がコドモらしいのは、その方がかわいらしいからだそうだ。

「プログラムは鈍ってない?頭痛いなーっとか、体が動きにくいなーっとか。」

「大丈夫っ!!」

「じゃあ、今日はオイル何リットル飲んだ?」

「イツモ通り2リットル!!」

「はい、ありがとう、じごくちゃん。」

女のハカセがそう言うと、ハカセは女のハカセを睨み付けた。
すると、女のハカセはハカセにごめんなさい、と言って

「ありがとう、G29。」

と言い直した。ワタシはこれが不思議で仕方ない。
実はさっきワタシはう嘘を言いました。
ハカセ達は、私の事をじごくちゃん、と呼ぶ時は、皆で「カイギ」をしてる時だけ。

テイキケンシンを終わらせた後、カイギ室にハカセと女のハカセが入って行った。

「…G29…、あと二日だよ。」

「あの子が、プログラムの間違いかなんかで、一年ごとに大量虐殺のロボットになるって…本当なの?」

「…わからない、今までG29の管理をしていた博士は全員死んでいった。一年ごとに、無残な姿で。まだ俺達はそれしかわからない。」

「いつしか、G29と言う名前を付けられて、この研究チームの中ではじごくと呼ばれているって…やっぱり可哀想よ。
かなりの防弾性を持っているから、原爆でも持ち出さない限り潰れないなんて…。」

「…バッテリーが切れるまでの辛抱だ。」

「そのバッテリーが切れるのはいつなのよ!!93年後なんて…!それまでにこの子によって人が全員死ぬかもしれないのよ!!」

女のハカセ…羽鳥はその場に座り込んだ。
腰が抜けたのか、力が抜けたのか。ぺたり、と座り込んだ。
羽鳥の隣に、ハカセ、香川が何時しか居た。羽鳥は目から涙を流している。

「…私、本当は怖い。でも、貴女と死ねるなら…。」

「俺もだよ。…戻らなくちゃ。G29のオイル補給の時間だ。」

「…………キスして。」

「……。真面目?」

「案外。」

二人は目を見合わせ、短いキスを何度もした。何度も、何度も。
会議室のドアの隙間からは、G29が覗いていた。その青いはずの目は、赤く染まっていた。

「ハカセ、トルヤツ、ユルサナイ。マエモ、マエモ…ソウダッタ。」

2日後、何が起こるかは博士たちにも予想できていたはずだ。

G29
(地獄、彼女は心を持っていた。これはこの世に存在する、数少ない事実。)



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