偽人夢

□この気持ちに気がついたとき
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「なんやもう今日は寝るんか」



最近なかなか体調が優れなくて嫌でも身体が休養を欲する。
元々自分に旅だなんて無理だと思ったいたけど、里を滅ぼされて行く宛もなかったし助けてくれた空さんや薬馬さんや六兎さんに恩返しをしたかった。

しかしやはり身体がついていかずに、こうしてよくダウンしてしまう。



「今日は熱はあるのか?」

「…分かんないです」



自分が木に寄り掛かりながらぼーっとしてると、自分の命の恩人兼絶賛片思い中の薬馬さんが、心配しながら直ぐ隣りでしゃがんで見つめて来る。

ちょ、何時も思うんだけど、診療中の薬馬さんて、真剣だし顔が近いから妙に意識してしまうのだよぉおッ。


ひたり、と首に触れた手の冷たさに意識を取られれば、ぺたぺたと肌を擦る心地よさに目を細めた。



「ん、つめた……」

「まぁやっぱり熱あるみてぇだしな今日も大人しく寝てろ」



腕を引かれてぽふん、と相手の胸に落されれば、薬馬さんの匂いがいっぱいに広がって身体が軽くなり、安心するのが分かった。


目を閉じて相手に甘えてみると、優しく頭を撫でられる。



「なんや何時見ても仲良し兄妹やのぉ、」

「や、薬馬さん、それは云ったら駄目ですわ」



こちらをちらちら見ながら空を制せば、庇うように新しい言葉を投げ掛ける。



「ん、でも最近なんだか薬馬さん、生にスキンシップ多いですわよね」

「これって、恋ってやつかしらん」

「「は!?///」」



彼女の言葉に自分の顔が真っ赤になるのが分かった。
幸い、自分は薬馬さんの胸の中にいるから全然平気な訳だが。
いや、色んな意味で平気じゃないけどね。



「カッカッカ…何や、真っ赤やのぉ。あれか、バレていーひんと思ってたんか?」

「なッ!?…お、俺はちげ―「な、ななな何で!?顔は見えない筈なのに僕が赤いってわかるの!!?」―…は?」

「い、今のは生へじゃなくて薬馬さんへの言葉ですわ…よ?」

「えッ!?」



顔をそーっと覗いてみたら、薬馬さんは…いや、薬馬さんもたぶん自分と同じくらいに真っ赤になっていた。



「ぇーと、これは…ね!熱なんだよッ」

「百歩譲って生が熱なのはいいとしてや、薬馬、ちょお来ぃや」

「ちょ、おま」



空は、薬馬さんの首を引いて← 近くの茂みへと姿を隠してしまった。

なんでだろう。
さっきのから察すると薬馬さんが僕の事好き…みたいだけど。
は、まさかね。



「僕、何かしちゃったのかなぁ」

「うふふ、いいえ、きっと違いますわよ」

「本当?」

「えぇ、」



本当かなぁ…。
何か色々不安になる。
当たり前だろぉお、だって好きな人に嫌われたと思うと泣けてくるだろぉお。



「おい生、」

「空?」



空に呼ばれて手招きをされたので、ねや(何故か変換してくれない)を連れてそこまであるいた。
そこには、薬馬さんも一緒にいて帽子を深く被っているため表情が見えなくて少し怖い。



「じゃあ、私はいくわね、ほら、空さんも」

「じゃあせいぜい頑張れや」

「ちょ、二人にしないでぇえッ!!!」



二人がどっかへ行ってしまった為大声を出したら、ふらっと倒れそうになる。

やべ、熱って忘れてた。
すかさず薬馬さんは受け止めてくれた。
自分も一瞬だったので直ぐに持ち直す。



「あ、えと…」

「生、」



薬馬さんが帽子を取って胸に宛る。
そして、気になっていた顔は。

真っ赤でした。



「…や、くまさん?」

「……さっき、空に云われた、『生薬馬が好き、薬馬も見る限りは生を拾ってきた高校生じゃなくて一人の女として見てるみたいやし、好きちゃうか?』ってな。俺は、空の言葉に不備がないから、そうだって云ったら、はよ告れや、って云われてな」

「えっと……?」

「……だから、俺は生の事が好きだ。付き合ってくれないか…?」

「なッ////」



嬉しくて嬉しくて、僕はめいっぱい薬馬さんに抱き付いた。





勿論、答えは…?




この気持ちに気がついたとき



(もっと早く気がついていれば)
(もっと早くこのぬくもりを感じられたのに)
(もっと、もっと早く)






end.
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