復活夢

□すきなんだもんッ!
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「(嗚呼どうして自分は…)」



一般人なんだろう。
最近ずっと考えている。
別にVIPになりたいなんて全く思わないけれど、一般人じゃなきゃよかった。

声優。

あの人達は凄い。
本当に凄い。

でも、
どうしよう。
自分は…
自分は。



「憧れから、変わってしまった」



ファン。
自分は、飯田利信さんの大ファンだった。
凄く好きで、ライブとかにも良く行って、やっと、名前を覚えて貰った。
行った時に、

「高坂なつめちゃん…だよね?確か」

って云われて、凄く凄く嬉しかったのを覚えている。

でも、そんな子いっぱいいるよねきっと。
芸能人なんだから、ファンの子なんて数えきれないほど居るだろうし、覚えてる子だって、自分だけじゃない。



「ファン…失格だ。僕はもう、これ以上飯田さんを好きになってはいけない」



ファン。
最初は勿論ファンとして。
恋愛感情なんてこれっぽっちも無かったのに、
何時から。何時からかなかなか会えないあの人を好きになってしまっていた。



「分かってるさ。絶対に叶わないって、」



でも好き。しょうがないじゃないすきなんだもん。
駄目と云われたってこの思い止められない。
すきなんだもん。

例えファンとして会いに行ったって、遠めからだって幸せになれる。

飯田さんの馬鹿…。
どうして一般人じゃ無かったの。



「飯田さんの馬鹿ッ…もう好きにならなきゃ良かったッ!」

「ひ、酷いなー…。これからも好きでいてくれると嬉しんだけど、なつめちゃん」



独り言に誰かが返事をした。
返事…をした!?
まさか…じゃなくて飯田さん!?

ワォ!
まさかのご本人登場ですかッ!?


まさか本人がいるとは思わなかった為、座っていたブランコから勢いよく転げ落ちた。



「え!?何で此処に!!?」

「家この近くだからね、じゃなくて、俺何かした?…泣く程嫌いにならなきゃいけなくなるような事、しちゃった?」

「ぇあ、嗚呼…違いますよ、嫌いじゃないから嫌いにならなきゃいけないんです」



このままだといけない。
どうにかなっちゃう前に…。



「どういう事?」

「好き、だから、です」

「好きなら嬉しいよ。何で駄目なの?」



落ちる涙を、飯田さんは優しく拭ってくれる。
声も、何時もみたいに無邪気じゃなくて、もっと優しいもので。



「声優なんだから好きでいてくれる人が多い方が良いしね」



その言葉が深く突き刺さる。
嗚咽が止まらない自分の背中を、ぽんぽんと軽く叩いた後、飯田さんはハンカチを取り出して目に当ててくれた。



「声優だから、です!!!」

「え?」

「僕…私は、ファンとして、じゃなくてッ一人の男性として、好きになってしまったからッ!もう、もうファンでは居られないです!」



思いっきり叫んだら相手は目を丸くして驚いていた。
顔を見れずにうつむいてしまう。
嫌われる、だろうな。

立ち上がって早く逃げたいのに、怖くてそこを動けない。
自分でも分かる程に震える肩を、飯田さんはそっと抱き締めてくれた。

そして、頭を撫でると強く抱きすくめられる。



「…そっか…良かった。うん、ただのファンでいてもらっては困るな」

「ッ…もうファン辞めますからッ」

「辞めて良いなんて一言も云ってないけど」

「え?」



何かと顔をあげると、瞬間相手の唇が自分のそれにあたった。



「ッ!!?////」

「ッわごめん!口じゃなくて額にあてるつもりだったんだけど!」

「ぁ、ぁぅぁ、ぇ、///」

「あぁもう!…なつめちゃんには俺の彼氏になってもらうから、それを踏まえてファンでいてほしい。特別な一人のファンにね」

「え………!?」



そう云って今度は図って唇にキスをされた。





身分なんて関係ない。
だってしょうがないんだもん。
いつの間にか好きになってて。

しょうがないじゃないか
だって僕は、飯田さんの事が────




すきなんだもんッ!



(いや、自分も声優失格だって思ったよ)
(飯田さん?)
(あはは、だって未成年にこんなおっさんが…)







end.

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