復活夢

□雨のちハレ
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6時間目も終わりダルかった時間ともおさらば。
荷物をさっさと片付けて、さぁ帰ろうと思った瞬間。

ふと耳にした、不快な音。
耳を済せばその正体は直ぐに分かった。


ザァアァァア....


雨、これは雨の音だ。

雨は嫌いではない。
むしろ、好き、が正しいかも。


今日は雨の中歌いながら帰ろう。
そう思った時、ある事に気が付いた。



『あ…どうしよう……。え、晴れって聞いて傘、持って来てないよ…。』


手をばたばたさせる。

そう、今日は晴れだと聞いていた。
(てかニュースだから間違いないと油断した。)
なので、傘など到底持って来ている筈がない。

仕方ないじゃん邪魔になるし。

て、云うか置き傘置いてあったらよかったのに。

あれこれ考えてみるも、面倒くさくなったので、考える事を完全放棄。
取り敢えず、下駄箱まで行った。



『しょうがない、走って帰るか……。』



色々考えたが、良い案が浮かばなかったので雨に打たれて帰る事にした。
ちょっとためらったが、たまには濡れてぴちぴちやるのも悪くない。



『行くぞーっ!!』



決心を決め、外に向かって走り出した。
思ったより強い雨だったけど、逆に強い方が雨が当たる感じがして楽しいじゃん!

でも、やっぱり傘が欲しい。
その時、誰かが腕を掴んだ。


『み!?』

「高坂なつめさん…ですよね、同じクラスの。外 雨ですよ?今外に出て行ってしまっては、ずぶ濡れになってしまいますよ?」



濡れて少しはねてしまった前髪を指先で水分を取ってくれている。

この人は、同じクラスの六道骸…?
この人とは、しゃべった事はほとんどない。


でも、ちょっと恋心を抱いていた。
皆から評判良いし。

学業優秀スポーツ万能な上容姿端麗の完ぺき人間。


でも、本人はそれが嫌らしく、陰で愚痴っているのを何度か訊いた事が在る。


正直気になってるんじゃなく恋してるんだと思う。

でも皆の憧れだから告白なんてしたら大変なことになるからしない。



『ぁ…六道くん?大丈夫大丈夫。慣れてるし。今日傘忘れちゃったから、元から濡れて帰るつもりだったしね。』

「それはいけません。女の子が体を冷やしちゃ駄目ですよ?傘は僕のを使って下さい。」


折り畳み傘を自分の前に差し出して来る骸。
あんまり優しくしないで欲しい。
変な勘違いをしてしまいそう。


濡れるのは嫌だけど、彼が濡れるのは
もっと嫌だったから傘を骸に返す。



「いいの。それじゃあ六道くんが濡れちゃうよ?」



骸はしばし考えたふりをする。
何だろうと見ていると、口をひらいた。



『しょうがないですね…なら、一緒に入りましょう。』



自分の傘を開け「どうぞ、」と手を招いて来た。



『ぇ、だだだ大丈夫だよっ。』



驚きのあまり変な声が出る。

そりゃあ骸さんと相合傘出来ればすごく嬉しいよ??

でもね、彼は皆の憧れの的だからきっと嫌われるよ。
みんなに嫌われるなんて怖くてできない。


何されるか分かんないもん。
視線を気にし、あたりをきょろきょろ見回した。
案の定、クラスの女子他大多数の骸ファンが、こちらを向いて嫌な顔をよこし、にらみ付けてきた。

はぁもう鬱陶しいなぁ嫌だ。


こちらが色々思っていると、待ち切れなかったのか、骸が口を開けた。



「はぁ、しょうがないですねぇ。ほら、行きますよ。」

『へ、ちょ、うわっ!!?』



見れば骸が自分の手を取って、傘を上に上げ手を引っ張り走っている。
他人からは誰かなんて認識などできないだろう。

全速力で走りまくる。
校門は直ぐそこ。
学校を出るとこちらを見てきた。



「これで良いですか??」

『あ…ごめん……私が人目気にしてたのわかったんだ…。」

「クフフ……構いませんよ。」



彼の手は、まだ自分の手を包んでいて。
その手がとても温かくて…
そんな事を考えていたら彼が口を開けた。







.





「……あの………僕、なつめさんの事が
…………好きです。」

『ぇ…………?』


彼の声。
とても嘘とは思えない。

勿論、自分も多分同じ気持ちだろう。
………そう、答えは………。


『私も……好き………。』



ぎゅっ

突然、抱き締められた。
雨はいやだったけど、でも、最後には嬉しいことがあった。








雨のちハレ



(僕は貴方の事ずっと見ていましたけど)
(え、僕もずっとあこがれてた)
(もっと早く云っておけばよかったですね)



end.

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