復活夢

□女の子だからね
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「おはようございます。」



今日は声優の仕事の日。
俺は、何時ものように軽くお辞儀をする形で挨拶をする。
もう何度もしている、当たり前の日常。
この日常が俺は心地良いと思う。



「おぉー飯田くんおはよう。」



声をかけて来たのは近藤隆。
共演をしてる先輩。
何か世間では俺と付き合ってるって云われてるけど、決して断じて違うんだからね!




因みに今日録音するのは家庭教師ヒットマンREBORN!の劇場版のやつ。
大体3ヶ月くらい前からやっている。

内容は、良く分からないが、なんかdream?っつーの?

俺はそんなもん好きじゃないし(つか知らない)興味などなくて、正直面倒ーって思っていた。



一つだけ、映画になって良かったと思う事がある。




それは、事あるごとにファンレターをくれていて、顔なんて見た事無いのにちょっと好きになっていた子がいる。

その子は、他のチャラい顔だけ目的だけじゃなく、性格も好いていてくれて、しかも、愛の度合いが違う。


本気で本気で好きでいてくれている。


そんな子がなんと

なんとだ。
今回夢主とやらの役のオーディションに合格していた。


キャストお披露目の時。
顔をみてまず、恋に落ちる。
顔が好きだなんておかしいかもしれない。
顔だけで好きになったのは初めてで、自分が許せなかった。


え。何故ってそんなもの身体目当て同様な気がすんじゃん。



それで、その子と目があった。
相手は、泣き出して「本物だー本物だー。〜〜〜〜っ!」
って叫んで。
そして、その子が名前を云った。



「―高坂なつめです……!よ、よろしくお願いします…!」



そん時はびっくりしたさ。




その時直ぐメアドを交換し、2、3日メールを交わした後に、俺が告白して、無事付き合う事になった。



―こんな、こんな僕なんかを好きになってくれて有り難うございます。
大好き。好き。

あの時の言葉は、忘れられない。
そして、今に至る。




「あれ、そういえばなつめちゃん未だ来てないみたいだねー。何かあったのかな。」



國分さんが当たりを見回した。

確かに来てない。
普段なら一番に来て、皆のやいのやいの楽しんでるのに。


俺もキョロキョロしてみる。
だかしかしなつめの姿は見つけられなかった。



「そっスね…近さん見ました?」

「いや、見てないなぁ…。もしかしたら寝坊かもね。多分、恐らくあながち。」

寝坊……?
いやなつめに限ってそれはないような気がする。

だがしかし絶対違うとは云いきれない。
仕方なくズボンのポケットから携帯を取り出した。

そして慣れた手付きでなつめのアドレスまで向かうと、電話をかけてみる。

……中々出ない



「高坂はもしかしたら事故にあったとか有り得なくないか?」



木内さんが何故か汗だっくだくで問うた。
…汗、かく程暑くないっスよ?

とその時。



「はっ!ぁああ、いぃいい飯田さん…っ!今…もう今着くですから…あ、切りますよ!」
「出た!!」



ぶっつり切られた。
なんともまあ。
もうちっと話していかったよすんすん。
とりま近状を報告する。

もう直ぐ付くらしいから、5〜10分くらいだろうか。



「なんか、もうすぐ着くそうっス。」

「すみません、お、ぉおおぉぉ遅れました!!!ごめんなさい!」

「早!?」



バン!と勢い良く開いた扉から息を切らしてなつめが登場した。
俺は安堵の溜息を落とす。

イヤしかし切ってから10秒もたってないよね!?
じゃああと1分待ってれば良かったよすんすん。


嗚呼そんなことを説明するんじゃなくて。

そして、どれだけの勢いで走って来たかは知らないが、あからさま今にもブッ倒れそうな程息が上がり、げほげほ云ってるなつめの元へと歩み寄り、見つめた。


國分さんも続いて近付く。



「なつめちゃん、大丈夫だった?」

「ぅはいぃい…んとに、すっ、げほっ!…みま、すみませんでしたぁあぁああ…。」



なつめは何気に目が潤んでいる。
hshsきゃわゆいなぁhshs
じゃなくて。


取り敢えずあの息バリ切れのなつめを落ち着かせないといけないかな。

俺は背中に手を置いた。
そしてゆっくり擦ってやる。



「大丈夫?」

「げほげほっ……ぁ…有り難うございます…。」

「おぉ飯田くん優しいねー!何?何?二人はそういう関係で…?」



國分さんが手でハートを作っている。
え!?まさかばれとるん!?
てか、え!?

いや、誰にも話してないからそれはないだろうが。
一応バレてないのを仮定にして話そう。



「やめてくださいよー。からかわないで下さい?」

「あははははっごめんごめん。」

「ケホ…僕が愛してるのは國分さんだけですー!あいらびゅー。」



まだ息が切れたまま、なつめは國分さんに抱き付く。
まるで背中撫でて下さいと云わんばかりだった。

國分さんも知ってか知らぬか優しく背中を撫でていた。



「ほらほら、大丈夫?」

「ぅみゅー……分ちゃんさんだいすきー…。」



何か國分さんが目茶苦茶羨ましいんですけど。
すりすりしてるし。
なつめは本気で甘えてるし。
俺にもまだそんな甘えた事ないよなあ!?
あ、いや、んな事ないわ。



「皆さーん。それじゃあ本番始めますよー。」



兎に角して、それから、収録が始まった。







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