復活夢

□渡したくなかった
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今日は久々の骸さんとのデート。
普段は牢獄にいてなかなか会えないんだけど、今日は久し振りに出て来れるらしいから、会ってデートしましょう、って云われた。

普段、おしゃれとかぜんぜん興味なんてないんだけど、何時もみたいなジャージやTシャツはやめて、ちょっとおめかし決めてみた。


可愛いですね、綺麗ですよなんて云われるのは骸さんだけだから、云ってくれると凄く嬉しい。


待ち合わせ場所に速足で歩いて行った。
少し早く来過ぎたかもしれないけれど、待つのら嫌いじゃないから。
待つ時間さえも掛け替えない時。

すぐくると思っていた。


でも、待ち合わせ時間が過ぎてもやってこなかった。



「……寒」



辺りは雨雲が広がり、ぽつぽつと雨。
その雨は次第に大粒の雨に変わった。
見上げた顔に水が遠慮なくかかってくる。



「寒い…雨は嫌いなのに」



近くのベンチに移動し、座れば髪からつー、と雫が滴り落ちる。
服の袖で擦るども次から次へと地元へ落下していった。

二重になる視界。

何時も私が泣いた時には涙を手で拭ってくれていたのに。


どうして肝心な時にいない人なの。


骸さんの側
膝の上
腕の中

いますぐまっしぐらに飛び込んで行きたい。


骸さんって云う飛び切りの日だまり目指し夕暮rainea

寂しいのに、なのに何処にもいやしない。


頬に雫がしたう。



「…何を泣いているのですか?」

「ぇ?」



求めて居た人物を見つければパッと立ち上がる。

って、違う。
会いたかったけど、でもこんなに遅れて来たのに謝罪もないのかよッ



「泣いて、ないし」

「嘘を吐かないで下さいよ、ほら、涙」

「涙って…これは雨だし」

「はいはい」



壊れかけたベンチから自分を引き上げると、骸さんは有幻覚で今、花咲く屋根のベンチをつくりあげた。

違う。
そんなのはいいから、早く、謝ってよ。
ごめんねと傘を広げてよ。



「…骸さんて大嫌い」

「え?」

「怒った顔は嫌い。笑った顔も嫌い。そもそもこのみじゃないの。だから別れようよ」



キッと嘘の言葉を云えば先程より増えた涙が落ちて来る。
違う。
本当は怒った顔も笑った顔もみんなみんな大好きなのに。


向うはそうじゃないなんて最悪の結界を想像してしまえば、先に云ったほうがましかと思って。

だから、「そんなの嫌です」なんて言葉を期待していた。

なのに。



「そう、です………か」



寂しそうな顔をして後ろを振り返ってしまうだなんて。

そんな。



「馬鹿…ッ骸さんは何にも分かってない」



とうとう私は崩れて落ちてしまった。
地べたに直に座って。

なによ

心に愛があるなら言葉で愛だの恋だのとか云わずとも、分かる筈でしょ……?



素直になれない。
だって、素直って我が儘の事でしょ?

ねぇ愛して欲しいよ。

媚びないが私自身。
声に出せばいいのに言葉に出来ない。


ごめんね



このままずっと一人佇むのかな。


たまには甘えさせてくれたっていいじゃない。



貴方の側に居たい
貴方の腕に居たい
貴方の名前さえ


どうして上手く云えないのかな…








「こうするしか、無かったの」



眼帯の少女は呟く。



「だって骸様に愛されていいのは私だけ」





全ては、彼女の幻覚が始まりだった






渡したくなかった



(私も骸様が好き)
(どうして嫌いになっちゃったの?)
(僕はまだ好きなのに)












end.

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