復活夢
□君のすきなとこ
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自分には好きな人がいます。
でもその人は高嶺の花で。
好きな人いっぱいいて、自分なんか手の届かない人。
想いが募る程に直接顔見てなんか、話せなくなる。
今日も、折角理科の実験で一緒の班になれたのに、話すら出来ない。
「ったく、んで俺が悲しくて十代目がいない班になんだよ…。貴方様が御叱りにならなければ自分は、自分は班のメンバーほぼ全壊にするってのに、」
「はは、じゃあ俺は逃げてやるのなーッ!」
「山本てめぇだけは始末してやるから安心しろ」
賑やかだなー。
唯それしか云えない。
座席は、前から
獄寺くん 山本くん
僕 獄寺ファン
こんな感じ。
さっきからファンの子から痛い視線が突き刺さるんですけど。
筵 代われよビッチが とか、隼人カッコいい何あの小娘ブスが
とかなんか雑音が訊こえるような。
「あーしかも実験で使った肉で料理とか面倒くさ」
「まあまあ、女子がいるだけマシじゃねーか、他の班男女別だからな、期待してんぜ、高坂達」
既にファンの子は獄寺くんに近付こうと猛烈アタックだし。
「アハハ、高坂、アタシは料理面倒いから、よろしく」
「えΣ」
僕面倒い以前に料理なんて出来ないぜ!!
包丁を手渡されて嫌でも切らなきゃいけない状況。
いや、まずそれ以前に山本てめぇ出来るだろォが!
「高坂にばっか押し付けるのもどうかと思うがな、」
「いいのいいの、どーせやる事ないんだからやらせときましょ♪」
ナイス獄寺くんてヲィ!!
自分が恐る恐る包丁を下に下ろそうとすれば、先程の女が手に触れる。
あれ何これ凄い嫌な予感するんですけど。
そして、そのまま勢いよく振り翳された。
「こう切るのよ!」
「!」
わざとなのか否かは分からないが肉ではなく指に直撃したそれは、見事に真っ白なまな板に赤い華を散らばせた。
流石にそいつも驚いてる模様。
「ぃ、」
一関節前から指を必死に押さえてみるも、どぷぁと血が溢れて来るので意味が無い。
視界が二重になれば色の無い水分が地面に落ちた。
ヤバい痛いこれどうしよう。
その時。
獄寺くんが、僕の腕を捕らえた。
「ぁ、う…獄、寺…くん?」
無言のまま手を頭より高い位置まで移動させられ、そのままグイッと引っ張りながらドアまで引きずられる。
先生も、軽く一瞥したかと思えば獄寺を見るなりすっと顔を逸らした。
「…保健室いかねーといけねぇだろーが、」
「あ、はい」
ずるずると引き摺られたまま自分は、保健室につくまで無言でしかいられなかった。
保健室についてからも、椅子に座らされて手当てを受けながら静かにいた。
「ぃッ……もっと優しくやってよ…」
「っせーな強くやらないと止血できねーだろーが黙ってろ」
なにそれ、とか思いながらも獄寺くんに触れられてる場所が熱く。
「……終わったぜ」
「…ども」
すっと手が離れていくのを名残惜しく思いながらも、仕方ないと諦めながら御礼をする。
今この気持ち君に云ってみたら困った顔するかな、それとも…
君のすきなとこ
ツナくんに褒められた時の照れた横顔、喧嘩した時のくしゃくしゃな泣き顔
君のすきな処なんて星の数ほどあるのに
このまま言葉に出来なくて。
「一人事、なんだが」
いきなり発せられた言葉に驚きながら、相手を見つめる。
その顔はツナくん相手なんかじゃ見た事ない、真っ赤で、それでいて真剣な、カッコいい顔。
「……お前が好きだ」
「えッ……」
その恥ずかしそうにする顔が、
自分だけのものになりますように。
君のすきなとこ
(全部)
(そんなのひとつに決められない)
(だって全てを愛している)
end.