復活夢
□落ちた雫を拭えば
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雨が降りしきっている。
ここ最近ずっと。
昨日まではサァアア、という雨音だったが、今日、この瞬間からはザァアア、という表現の方が最適だろうか。
暇だ、と言葉を発する為にくりん、と寝返りを打って起き上がる。
「スクアーロ隊長、暇です」
ぴとりと銀髪綺麗な長髪のかれの背中に寄り添うと、温かい、彼独特の香りがした。
彼も又、小さい身体が寄り添われる風景に唯幸せを感じるのだった。
スクアーロはなつめの両腕を掴み、前に引き寄せると、後から抱き付かせる形の体制をとらせる。
「……雨、降っちまったなぁ…」
「雨の守護者、でしょう?何とかしてください。………久し振りの休暇だったのに」
寂しそうに呟くなつめの頭を静かに撫でる。
「…幾らなんでもむちゃくちゃだぁ……。無茶云うな」
「……でもでも、その書類を何とかする事は出来ると思います。折角の、折角の休みなのに」
なつめは、現在進行形で作業が進められている大量の書類の束を見ながら人指し指をそれに向けた。
今日は、実を云うとなつめの両親の命日。
スクアーロと本人のみが知る事なのだが、きっと彼は気が付いて無いだろう。
印はさり気なく打ってあったのはこの前みつけたけれどカレンダーは先月から変えられていない。
この日はなつめは一人でいる事を拒む。
今日だって、休みが貰えて、スクアーロもたまたま休みだったから朝から晩までイチャイチャしよう、と思っていたのに。
ボスが。
糞ボスがスクアーロに書類を渡してきた。
おまけに外は雨。
気分はもう最悪だった。
「…それは糞ボスに云ってくれぇえ」
そんな事とは露知らず、スクアーロは唯黙々と作業を進めている。
「……スクアーロ……構って、構って……。」
「あぁ?」
とてつもなく寂しい気持ちになり下唇を噛みしめ、甘える。
しかし今の忙しい彼には、それはイライラの元となるのだった。
ちょっと、怒ってやろう。
そんな軽い気持ちで、なつめの額を軽くはたいた。
そして、なつめを背中からぺいっとはがすと、やや普段より大きな声で促した。
「るせぇぞ!急いで終わらせてやるから、ちょっとの間一人で静かに待ってろぉ!今日に限ってなんでんなにベタベタすんだぁああ」
又、何時ものように明るく、はぁい、とか云ってくっついて待ってるだろう、と予想していたが、なつめの明るさは消え失せていた。
「………ゎ、分かり…ました」
「?」
おかしい、と振り向いてみたらなつめは、ドアまで走り、扉を開けて出て行ってしまった。
去り際には、今日なのに、今日なのに、と連呼しながら滴を零した。
「?なんだぁ?」
そんなことを気付かずに、スクアーロは書類へと視線を戻すのだった。
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