復活夢

□ちいさな
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俺は猫が好き。
家にも何匹か居るし、捨てられた猫がいたら拾って来る。

家で猫が飼えないなつめは、良く野良猫を連れて来ては、よかれと思って、動物保護の施設へ持って来て居た。


なつめの猫の飼えない理由は、両親がもう死に際を見たくないから。
なつめだって同じ。
病気に掛かってしまい、発作が止まらなく、いきたえてしまった。

そして、今日も。



「豊永さん…家の前に、段ボールで詰められてました」



彼女はやってきた。
まだ小さな子猫は生まれながらの病気をもって捨てられるケースが大きい。
そのため、保護施設へ持っていく。

そして、今。
持って行ったら、先ず検査を行なっていた。
検査が終わるまで何時も猫や犬を見るのだが、今日は、公開殺処分で皆に捨てられたペットの末路を知ってもらおう、そんな事をやっていた。


最初は何か分らなくて、ちょっと覗いてみようか、と軽い気持ちで部屋に入って行った。



「ぇ、あ………」



悲劇。

中では残酷な光景が繰り広げられていた。


機械を操作して後ろから壁を迫らせて自分達でガス室へと向かわせる場面。
機械で穴の上まであげて檻から落して蓋を閉めて燃やしてしまう光景。
餌の実験で動物を閉じ込めたりする光景。


どれも衝撃的だったが、何よりショックを受けたのは。


先月俺達が連れて来た犬が一匹ガス室で混じっていた。



「え、あれ、このまえ、え」



犬5匹くらい入れそうな大きさの中に入れられた。
犬だって、最初はガス室に居るだなんて考えてなく、俺らを硝子越しに見て。

尻尾を嬉しそうにふって居て。


なつめは、窓に手をついて、唖然としていた。


一つ、目から雫が落ちたのと同時に、子犬は苦しそうにわん、と鳴いて。
なつめはぎゅっと目を閉じて俺に、抱き付いてくる。
俺はそれを優しく受け止めて相手の耳を強くふさいだ。



「やだ、やだ…ごめんなさい、ごめんなさい!」

「大丈夫、訊こえない…何にも訊こえないよ」



仕方ない事だが、きゅ、くぅん、きゃんきゃん
と力弱と鳴く犬を俺らは、唯唯見るだけしか出来なかった。



「あぅ、僕のせいで、せいで…ッ」

「違う、違うよ、なつめのせいなんかじゃない」

「ごめんなさいッ!!」



これにも自分は、唯唯見るだけしか出来なかった。





――――――――――――――――






「やはり病気を持っていますね、症状は主に痙攣を起します」



普通は子猫から感染している物は即終わらせているらしい。



「どうしますか?やはり家で預かりましょう」

「やだ、僕が飼う、」

「なつめの家もう駄目でしょ。病気持ちなんて特に」

「で、でも…」



死ぬのが嫌なら、仕方ない。
なつめは辛そうに麻酔で眠っている猫を見つめていた。

ま、そうだよね。



「だからなつめはあきらめて、俺が飼うから」

「豊永さん!」



だってどれも大切な命。

何より痙攣だからって貰われないなんておかしすぎるから。
そしてなつめが辛そうにしてたから。



「名前、付けて良い?」

「いいよ、なつめが付けてあげて」

「じゃ、桧音!桧音がいい!」






可愛い可愛い子猫ちゃん、
君に、幸あれ。







end.

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