復活夢
□今日はわたしの
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今日は何の日か知ってる?
一年に一度だけ、自分が一番になるひ。
なのに、なんで?
今日、ふっきゅん事藤原祐規さんにデートを誘われた。
普段は自分から誘わないとなかなかデートなんかしないのに。
なのに、なのに何でだろうとか思ったら、そういえば今日は自分の誕生日だったっけ。
そういえば、このまえ、欲しいものある?って探り入れてたな。
あの時は、側にいてくれれば構わないって返したっけ。
「あ、なつめ、オハヨー」
「藤原さん、おはようございます」
今日は素顔の少年のライブに招待してくれた。
一番良い席を取ってくれた。
このビルに来てって云われたから、来てみたら、相手は寒い中待ってたのか、指先と頬と鼻がほんのり赤くなってる。
「……だいぶ待たせましたね、身体つめたい」
「そんなことないよ、これは俺が好きで外に居たんだから。……ま、春とは云えどまだ寒いんだね」
「……ぅー」
幸い人が居なかったので、相手を手っ取り早くない暖める為に抱き付く。
嗚呼、体はつめたいのに何故だろう。
何処か温く感じる。
服をきゅっと掴みながら甘えていると、相手もこちらを抱き締めてぽふぽふと頭を撫でてくれる。
「おっぱようございまっぷー!いやあ、フッキー、何人が居る中いちゃらぶ出来るかなあ、リア充め」
「ノブ!」
飯田さんがやってきて、慌てて離れた。
自分も、相手も名残惜しそうにしているのが分かる。
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それから、特別に練習を見せてもらい、開演近くなったら席までスタッフさんが案内してくれた。
席について切り忘れて居た携帯を開くと丁度のタイミングでメールが入った。
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fm ふっきゅん
sub 終わったら
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終わったらその場を動かずに、
じっとしてる事。
スタッフさんにはもう伝えたか
ら俺が来るのを待ってて。
打ち上げ一緒にいこう。
その後ふたりで行きたい場所が
あるから
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自分は、はいとだけ返信を送って電源を落した。
ライブが始まって、会場に歓声が走る。
皆それぞれにキャーキャーしてるけど、やっぱり何故かふっきゅんへの歓声が大きくきこえてしまった。
終わってからも、当初は握手会だった筈なのに、急遽ハグ会に変わったみたいで、遠くで自分の恋人に嬉しそうに抱き付く女が目に入る。
ずるい。
僕だってまだ、彼女なのにまだ、本格的に抱き締めて貰った事ないのに。
普通の、親子みたいなハグなのに。
仕方ない事だけど、でも、やっぱり悲しい。
涙が溢れてくる。
「俺の可愛いおひめさま、何を泣いているの?」
いつの間にか終わってたみたいで、ふっきゅんは僕の前に来て涙を拭ってくれた。
「……ハグ、」
「嗚呼、やっぱり…。ごめんね、でも、仕事だから、」
「……分かってます」
分かってるけど、悲しくて。
遠くでは、飯田さんと美緒さんと豊永さんが見守っていた。
「でも、やっぱり見てて楽しく無かった」
「……うん、分かってる」
顔を逸らして自分の心の狭さが分かる。
そんな時、ふっきゅんは、優しく抱き締めてくれた。
そして、前髪を手でかき分けると、ちゅ、と軽く額にキスをしてくる。
「ぁ…」
「キスは、なつめにしかしないから、許して?」
………僕だけだなんて云われて納得しちゃう自分は、単純なのかな?
end.