D灰夢

□sakura addicion
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「あ、ラビ来ましたよ」



中庭の木にもたれ掛かる白髪の少年は二人を見つけるとおーいと手を振った。



「あ、アレンくーん」



それに気付くとつばめは、俺をほっぽいてたったかと走って行く。
慌てずに歩きながら行けば、ほぼ同時に俺とつばめは立ち止まった。



「わ、あ…」

「cherry brossum.日本語ではsakura、と呼ぶんでしょう?」



桜を指差すもやしは、嬉しそうにはしゃぐつばめを見て微笑むと、俺に近付いて来る。

何かと思えば風が吹き散った花びらをさっと掴み取り、俺の手にそっとのせた。



「おかえりなさい、神田。つばめさんとの仲は順調ですか?」

「は?」



怪訝そうに見てやれば相手は苦笑いし、又花びらを掴んでつばめの元へと歩いていく。
それを俺にしたように渡せば、頭をぽんぽんと撫でている。

気に入らない行動にずかずかと歩いていけばもやしは、クスクスと笑っていた。



「なんだよ」

「いえ、嫉妬した貴方は可愛いなと思って」

「はあ?」

「あはは、今日はこの桜を見せたくて及びしたんです」



頭がイカれてしまったらしいソレは、御手洗団子を口に咥えれば、一本をつばめの口にぶっさして踵を返した。

ちょ、こいつ何しに来たんだよ。

むぐむぐと貪るつばめをみれば、もやしはそのまま帰っていった。



「じゃあ俺もおいとまするさ〜」



ひらひらと手を降るラビを二人で見送れば、つばめは既に食べ終わっていたので話し掛ける。



「本気で何しに来たんだよ奴は」

「ねー」



ひらひらとまわるつばめをみれば、自然に相手にキスをする。

甘い。



「桜ってお前みたいだよな」

「?何で?」

「………別に」



首を傾げる愛しいつばめの頭を撫でてやれば、二人桜を眺めた。









──桜咲く 舞い落ちる
    儚くて 優しくて 壊れそう──


気持ちみたいな花







end
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