偽人夢
□わかってない
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最近、薬馬さんがあまりかまってくれなくなりました。
今日だって、なんか避けている気がする。
「薬馬さーん…僕、これ食べたくない」
「は?何云ってんだ。きちんと食べろ。御前唯でさえ栄養足りてねぇのに」
「……じゃあ薬馬さんが食べさせて下さいよー…」
「は?」
「薬馬さんが、あーん、て食べさせてくれたら僕がんがってなんでも食べられそうです」
はい、と箸を手渡してる。
前だったら、いいぜ、と云ってすぐに食べさせてくれていたのに。
今日も薬馬さんはそっぽを向いて黙々と食事をしてしまった。
「もう、いらない」
「おい、ちゃん食べろよ」
「僕、子供じゃないんだからそんな良い方やめて……ください」
「生?」
かたんと箸を置いて立ち上がった。
薬馬も立ち上がるが、自分はそのまま出口へとむかっていった。
そんな自分の腕を掴むと、薬馬さんはこっちをギッと睨んで来た。
薬馬さんの、はじめてみる怖い顔。
彼は本当に怒っているようで、腕に入った力がじかに伝わってきて、とても痛い。
「いった…」
「おい、御前自分が体弱いの知ってるだろ、だったら黙って食えよ」
「……薬馬さんが、抱きしめてくれるんなら。食べてあげます」
きゅっと相手の服の袖に抱きつくと、薬馬さんはバッと僕の手を払った。
「おまえ、さっき自分で子供じゃないって云ってたところだろ?だったらそんな事云ってんじゃ、ねえ…、離れろ、」
「ッ……なんで、やだやだ、もう嫌い!薬馬さんなんて、大嫌い!」
「あ、ちょ、おい!」
僕はその場を全力疾走で走って逃げてしまった。
どうしてだろう。
前はあんなに優しくしてくれたのに。
毎日大好きって伝えてくれたのに。
最近はめっきりそれが無くなってしまった。
僕が寂しくで、どうしようもなく悲しくなったとき、一緒に寝ようよ、って云ったら。
前は、いいぜ、って云って優しく抱きしめながら寝てくれたのに。
いまでは、他の女どもを当たれって云うし。
空の処で一緒に寝たら、すっごい、すっごい怒ってきたし。
もう、僕の事好きじゃないのかな。
それとも、僕が、怖がってキスも拒んだからから、なかなか触らせてくれないから、萎えたのかな。
前、ものすごく良い雰囲気に成って、薬馬さんが、僕にキスをしてきて。
はじめてだったし、恥ずかしさと怖さと嬉しさで拒んでしまった。
薬馬さんは、悪ぃ、て云って話してくれたけど、あの時の寂しそうで苦しそうな薬馬さんの顔は忘れられない。
ぜんぶ、僕が悪いのかな。
嫌だ。
大好きなのに。
薬馬さん、もう抱きしめてくれないの……?
自分の部屋でうずくまって涙を流す。
ぽつりと落ちたことばは、だれも受け止めでくれなかった。
続く.