わぐなりあ
□貴方にはかなわない
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今日もワグナリアは暇そうです。
何故分るかって?
…来る時硝子から空っぽの席が見えたからです。
「おはようございます、」
「ぁあ!みなもちゃん!今日もがんがろうね!」
「嗚呼今日もみなもも先輩もちっちゃくて可愛いなぁ…」
「「ちっちゃくないよ!!」」
今日も小鳥遊くんは僕とぽぷらちゃんをちっちゃいと云う。
僕は確かにちっちゃいけど…ぽぷらちゃんより小さいけど悲しい…。
少しでも大きくなって大人になりたい。
だって自分は恋してるから。
大人なあの人に恋してるから。
だから、身長を変えられない変わりに、何時も背伸びをして大人に見せるように頑張っている。
今日も、少しでもお話ししたいな。
「えっと、おはようございます、佐藤さん、そ…そーまさんッ」
「おぅ社おはよう」
「おはよう、みなもちゃん」
はい今日も会話できたッ!//
性格には挨拶だけどこれでもぉkッ!
はいそうです、今僕は相馬博臣さんに片思い中です!
「みなもちゃーん…ごめん、男の人が席入っちゃって…あのね、注文は種島さんが取ってくれたんだけど、ね」
「あ、伊波さん…はい!えっと料理運べば良いんですよね?何番さんですか?」
「3番さんお願いできる?」
「はい!」
可愛い伊波さんに頼まれたのなら仕方ないな。
「みなもちゃん、はいこれステーキと、スープ、両方共熱いから気をつけてね」
「ぅぇッ!?あ!はい、相馬さん有り難う御座います!」
そして自分はスープとステーキを両手に持って3番テーブルまで歩く。
そこには自分の大嫌いな、僕を苛めてた、グループが、座っていた。
嘘…。
途端に足が止まって、身体が震えてしまって、食器が擦れる音がした。
「あれ?…みなもちゃんどうしたんだろ、あんな処で、止まって」
「ぁ、」
相馬さんの声が訊こえる。
行かなきゃ。
僕は震える足をむりくり動かしながら席へ向った。
「ぉッ…お待たせしました、」
「…あれ?お前社じゃね?」
「マジだウケる、あ、手が滑っちゃった☆」
そう云うと彼は持って来た料理二つをわざと落とした。
ガッシャーン!
「熱ッ!!」
「ッあ、みなもちゃん大丈夫!?」
音をききつけてぽぷらちゃんと山田が駆け付ける。
「あ、全然大丈夫です!わりかし熱く無かったので」
「山田…山田ダスター持ってきました!拭いてあげます」
「みなもちゃん目茶苦茶かかってるよ!?」
「…そう見えるだけですッ」
ええ見たまんまのかなりぶっかかってます。
じんじんします、こりゃ火傷したな。
今超泣きたい。
だけど、皆に迷惑をかけたくない。
みなもは床を拭く為しゃがむ。
……ッ…痛いよこれ!!
「ぁあみなもちゃん私やるよ?」
「大丈夫です全然いたくないので!」
ぁあああぁあ失敗したくなかったのに!
てめぇらのせいで初めて失敗しちゃった。
痛みをたえる為にふるふると震えながら床を拭くと、いきなり腕を引かれて立ち上がる形になった。
「…みなもちゃん、こっち来て。後よろしく」
「ッ相馬さん!?」
どうやら相馬さんが腕を引いてくれたみたい。
ぉおう男性独特の手付き…凄い顔が赤くなってくる。
僕はそのまま休憩室まで連れていかれた。
椅子に座らされて相馬さんは氷と薬を持って僕の前で座った。
「ぇ…ぇえと相馬さん…?」
「あははー、君目茶苦茶熱いんでしょ?ほら火傷してる」
「痛くしないです!全然平気です!」
「はい」
「ぁいッ!」
ぺし、と軽くはたかれたらかなり痛みがして来た。
そして相馬さんは素早く手当てをすると、頭を撫でる。
「ぅぇ…そ、相馬さ…/」
「背伸びするのはいいけど、俺には甘えて欲しいなー」
「で、でも、」
「好きな人にくらい甘えてみたら?」
「でも、……え!?」
相馬さんは頭を優しく撫でたあと、ぎゅっと抱き締めて来た。
そして何時もの笑顔を作ると、耳元で小さく囁く。
「好きな人には、甘えて欲しいなぁー」
痛かった事も好きだった事も、
全部ばれてたんだ。
貴方にはかなわない
(なんで分かったんですか?)
(ぇえ?いや分りやすいし)
(相馬さんの事に関しては山田も分かりました!)
end.