カゲロウプロジェクト

□君が何時も厚着な理由
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「…ぁっちー…」



今は真冬だってのに、なんで熱いだなんて云ってるか。
それは、キサラギが寒がりだからアジトに暖房ががんっがんについてるため。
勿論、暑いから腕は腕をまくる。

ふと隣りに座っていた海莉の格好に目が付いた。



「…暑くないすか?」

「ぇ、」



見れば彼女は長袖をまくらずにしかもかなり厚着をしているではないか。



「あつく、ない…かな」



ふいっと目をそらされる。
何かと考えながら海莉を見ていると、ふいに腕を後ろに隠される。

これは何かがあるな。



「…大丈夫だよ、暑いの平気だし」

「そうっすか、でも海莉汗…せめて腕でもまくったらどうすか?」



俺は、わざと彼女の腕を掴む。
途端に彼女は顔を歪ませて力を入れて構えた。



「…セ…ト?」

「何か、捲りたくない理由でもあるんすか?」



にこり、と笑えば彼女の口許がきゅっと噤んだ。
ふいっとまた目線を逸らそうとする。
いけない、と瞬時に彼女の前に立ちそれを防ぐ。

じっと見つめれば彼女は俺から目を逸らさなくなった。



「……ほら、」



とん、と海莉の腕をつつく。
彼女は負けました、とでも云うようにしぶしぶ腕をまくる。
そこには、無数の長い切り傷が刻まれていた。



「いつからっすか?」

「此処に来る前」



つー、と傷を指でなぞれば見える不安げな顔。
俺は薄く笑い、彼女を抱き締めた。

背中を優しく撫でると、彼女もまた口を開く。



「いつから?」



俺はちゅ、と額にキスを落とす。



「さっき、でも確証はなかったって状態なら結構前から」

「…そっか…」

「大丈夫っすよ、」



ぎゅうと抱き締めれば見える雫。
俺は優しく彼女を包み込んだ。



「イマドキリストカットとかみっともないっす、俺がいるんだから頼って欲しいっすよ」

「ごめんなさい」

「でも分かって良かった。これでもうしたらダメっすからね」



ぺいっと海莉の分厚い上着を引き剥がせばぐっと両腕を捲らせる。



「ぁ、」



そしてポケットから黄緑色のリストバンドを取り出せば海莉にそれをつけてやる。
物珍しそうに見る彼女の頭をぽんぽんと叩けば、あげるよ、と笑った。



「それで隠して、我慢なんかしたらだめっす」



彼女は、とても嬉しそうに有り難うと呟いた。
















彼女が何時も厚着な理由



(自分を傷付けて自分を隠す)
(俺は彼女の秘密をしった)
(誰も知らない、君だけの心)










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