カゲロウプロジェクト

□君の隣で
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今日も私は学校帰りに行くところがある。
もうしばらく日課になってしまったそれは、引きこもりの彼の家に行くこと。

大好きな、彼の元へ。


シンタローはアヤノが死んでしまってからもう何ヶ月も学校にいていない。
私は、それを心に強く受け止めた。


それは何故か。
シンタローにとってアヤノの存在がそれだけ大きかったって事だから。
良く、シンタローは私が死んだら今みたいにショックを受けてくれるかな、なんて考える。



「あ、ついた」



角を曲がってちょっと進めばそこは彼の住む家。
私は手慣れた手つきでチャイムを鳴らした。

ほどなくして彼は出て来る。



「…」

「やほ、シンタロー」

「また来たのか…」



面倒くさそうに頭を掻く彼にひらひらと軽く手を振れば、何時もより少し多く開かれるドア。
きょとんと見つめれば、シンタローは前に出た。



「ぇ、どうしたの?」

「…何時も玄関先で駄弁るだけだろ?なら、入れよ」

「わぉ!」



少し照れくさそうに俯くシンタロー。
私は嬉しくなってそれを直ぐに喫んだ。



「ほぇー…」

「あんま、じろじろ見んな、散らかってるから」



此処がシンタローの家かー、なんて思いながら辺りを見渡す。
適当に座れなんて云われたのでその場に落ち着く。
お茶も出して貰ってしまった。



「今日ねーテスト返って来たんだけどね、簿記が28点で赤点だったの、あっはっは」

「は、」



けらけらと笑いながらそれを前に突出す。
途端、シンタローの表情が変わる。

どうしたものかと彼の顔を覗けば、たくさん汗をかいていた。



「大丈夫…?」



心配になって手を伸ばせば、彼の肩に触れた時、がばっと抱き締められた。



「えッ!?」



訳が解らずにあたふたしてると、彼がふるふると震えて居るのが分かった。
下手に突飛ばす訳にも行かない。



「…も、か…?」

「へ?」



ぽたりと雫が落ちたらのが解る。
私はそれを指で拭ってあげる。



「シンタロー…?」

「お前も…俺の前から居なくなるのか…?」



彼は私をぐっと押し倒す。
私はハッと息を呑んだ。
そうか、きっとアヤノを想像したんだね。



「私は居なくならないよ。シンタローの隣りから、消えたりなんかしない」

「でもさ、俺の好きな人は何時だって居なくなるんだ」

「…ぇ?」



シンタローは訝しげな表情で私の鼻をつつく。
そして寂しそうな表情を浮かべた。



「好き、て…?」

「俺が、お前を…好きなんだよ」

「ふぇえ…!?」



そして私の上から退いて行く。
たまらず彼の腕を掴めばそれを制する。
私は、彼の頬に手を伸ばして笑う。



「私がアヤノみたいに死んじゃう訳ないじゃん。だって私もシンタローがだいすきだもん…。シンタローの側にいたいもん」



ふふんと笑うと、私は少し身体を起こして君にキスをした。















君の隣りで



(だから、さ。私に教えてよ)
(勉強も、生きる楽しさも)
(そしたら嬉しいでしょ?)










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