いずも夢
□一見同じだったそれは大きかった
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「あ…やばいジャージ忘れた…」
今は冬で、今日今から外で体育がある。
寒さに耐えられない自分達は、皆ジャージをTシャツの上に羽織るのだが。
朝忙しかった為海莉は、持ち物をきちんと確認せずに学校まで走って来たためまさかのジャージを忘れてしまった。
鞄をあさりながら固っていると、柚葉が着替える為にこちらへやってきた。
いまから想像するだけで寒い。
海莉は柚葉に勢いよく飛び付く。
「わ、ちょッ……もーこんな寒い中ジャージ忘れるなんてあんた馬鹿?」
「ぅゎぁあああどうしよう柚葉ちゃんッ寒くて耐えらんないよッ」
「海莉が悪いんでしょ?ま、ドンマイ」
「柚葉ちゃんが何か酷い…」
柚葉は海莉をぺいっと剥すと、我関係無しとそそくさと着替えを初めてしまう。
仕方ないからと取り敢えず着替えてみたものの…。
「当たり前だけど寒いよ!!」
「知らないわよ海莉が悪い…だけど本当に大丈夫?」
「ぅぁー同情するならその天使のようにふわふわで断熱性を持つ温いジャージ様を我に御与えくださいぃい」
「こっちが寒くなるじゃない!嫌よッ」
柚葉はジャージを貸してくれる筈なく、海莉はこの寒い中マラソンをしなくてはいけなくなった。
男女共張り切る人とサボる人が分かれるが、海莉も柚葉も、男子組の出雲と他諸々で毎回サボる。
だがしかーし。普通に駄弁るだけだから寒いんだよねちくせう。
はあ、と重い溜め息をついて廊下へと向かった。
「ぁあーん風が冷たい…!!」
「半袖なんて海莉と馬鹿な男子だけね…」
肩を抱きながら凍えながら嘆いていると、後ろからぴょんと抱き付かれた。
「あれぇ?海莉半袖寒くないの?」
「寒いよ!?…じゃなくて玄衞達!」
「よ、寒そうだな」
例のサボリ組の人たちがぞろぞろと歩いて来た。
かなり寒そうに震える海莉を見て、玄衞はすりすりとしながら温める。
すると徐に出雲はジャージを脱ぎ出した。
回りのみんなはいきなり何をしでかすのかとばっとこちらをガン見している。
「ちょ、えっと…國崎くん?;」
「何やっているんだいプリンセス…」
ジャージを全て脱ぎ終わった処で出雲は、乱暴に海莉にそれを着させるとズボンのポッケに手を突っ込んだ。
「女の子が身体冷やしたらだめだろ?俺の着てろよ」
「え?でもでも、國崎くんが寒いよ?」
「いいから早く着てろって」
未だ通して無かった袖を腕に通せば恥ずかしそうに海莉は袖を握った。
「あ…有り難う…」
「おうよ!」
温いジャージを着ながら、海莉達はグラウンドまでかけていった。
一見同じだったそれは大きかった
(ん?どうかしたか?)
(國崎くんて僕より小さいイメージあったけど、案外背高くて大きいんだね)
(ちょ、おま、それどういう意味だよッ!)
end.