復活夢2

□守ってあげたい
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プチ家出しました。

理由は簡単。
親に自分の回りの物を全否定されたから。


大好きな学校も、漫画も、音楽も、アニメも、友達も、自分も、

好きな人も。


全部全部ぜーんぶ、否定された。
あはは笑っちゃうよ。

だから僕は、側にあった蜜柑を投げ付けて家を飛び出して来ちゃった。
…此処までは別に良いんだけどね。

いやよくないけど。

あれだよ、寒い冬の夜にコート忘れて来ちゃった☆
寒いっす。マジ寒いっす。


取り敢えず温かくて尚且人気が少なくて(泣いてるから人に会いたくない)ごはん食べられる場所ないかな。

とか思いながら近所をふらふらする。
只今午後7時。


……そうだ、東京に行こう。
今回は、そんなお話。



───────────────────
飯田夢 守ってあげたい
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只今午後9時13分。
仕事が終わって、フッキー…あ、藤原祐規ね、と近所の居酒屋で飲んでいた。

蛸の炒め物を食べながら仕事の事を話している時、不意にフッキーが机の上にある俺の携帯に視線を向ける。



「ノブ、携帯光ってるよ。メールじゃない?」

「ん?あ、ホントだ」



フッキーが指を指すもんだからその先を目で追ったら確かに携帯が光っている。
ディスプレイには、なつめ、と表示されていた。

片手で携帯を開くと 新着メール一件 の文字。
俺が送って返信を出して来る事はあっても、この時間になつめからメールをして来る事は珍しい。

箸を口で咥えながら訝しげに画面を見ていると、フッキーは首を傾げた。



「?見ないの?彼女からでしょ」

「ん?嗚呼…今見る」



疑問に思いながら決定ボタンを押すと、衝撃的な内容が本文に書かれていた。



──────────────
fm なつめ
sub 夜遅くにすみません
──────────────
こんばんは、なつめです。
突然ですが家出して東京まで舞
い戻って来ましたッ
今駅にいるんですが、どうしま
しょう。
行く所がありません。
──────────────



「……は!?」

「え?何何?」



思い切り叫んでフッキーが首を傾げる。
直ぐにメールの内容を見せたら同じように目を丸くさせていた。

急いで電話をかける為にアドレス帳を引けば直ぐに発信する。


なつめはワンコールで電話に出てくれた。



「もしもしなつめ!?今何処の駅に居るの!?」

『ぁー…いえ、あれは、その…嘘ですよ…。僕、あの、驚かせたくて、その…』



電話からでも伝わる震える声。
泣いている。彼女は今、絶対に嘘をついている。



「嘘。今何駅なの?迎えに行くから、」

『だ…だから違うです、今家ですからー、あのね、心配しない―神田駅ー神田駅ー、お乗りの方は―にゃあぁぁあ』



おま、まだ本当に駅なのかよッ。
俺はあれだよ、もう外出たかと思っちまったよ。

塚神田駅て直ぐ側じゃん。
これなら走れる。
塚100%間に合う。

フッキーにちょっと待っててと云ってから店を飛び足した。



「全くノブも本当なつめの事好きだよな…」



お酒を飲みながら、藤原祐規は小さく呟いた。



神田駅は、近く、だなんて云ったが、実は居酒屋の歩いて一分あたりにある。
こんな時俺はかなり勘が利くから、一つ出口を押さえれば捕まえる事は簡単だろう。


なつめは近くにいるとは思ってないだろうし、とにかくつかまりたくはない為に進むか戻るか出て彷徨うかのどれかしかない。

まず進む場合、一応学生なのでなるべくお金は使いたくはないだろう為にまずないだろう。

戻る場合は、そのまま戻ると料金的な問題でダメ。切符を買うにも時間と料金の無断。

消去法で彷徨うに決定。

考えている間に駅についたので、改札を張り込む。
丁度と云った所でなつめが改札から出て来た。



「ほらやっぱいんじゃん、てか、ずっと泣いてたの?」



見れば彼女は目は腫れていて、尚且未だに涙を流している。
逃げようとする相手の腕を取り上げると、すっぽりと胸の中へ納めた。



「やだやだ、放して!」

「誰が放すかアホ」



ひょいと持ち上げれば姫抱きをして、先程の店まで戻る。

いやあ近くに誰もいなくて良かったわ。
こんなの、ナンパしてる犯罪者にしか見えないからな。

かたかたと震える肩を強く抱き締めながら席まで戻ると、フッキーに頼んで貰った温かい珈琲を彼女の席に置いた。

そして、何故か居る美緒が俺の席に座っていたため、

美緒 なつめ 俺

のように座った。
まぁ逃げられにくくなるしいいか。

今にも立ち上がりそうな相手を抱き締めれば、こちらへ体重を預けさせた。

部屋みたいになってるため回りにはみえなくて便利だ。



「ほらほら、なんで家出なんかしたの?」

「んなの、したかったから、ですッ」



諦めたのか抵抗をせずに目を擦っているなつめの頭を撫でてやる。



「だから、家出をしたくなった理由」

「ノブ目茶苦茶心配してたかんね、メール見た瞬間血相変えてた」

「ウチ来たばっかだから分からないけど、取り敢えずノブのなつめ愛は凄いからね」

「はいちょっと黙ろうかー」



どうでも良いから、恥晒されるのはやめて頂きたいです。
けらけらと笑う二人に焦りながら相手の頭を撫でてやる。

泣きながら俺に控え目にもたれ掛かるも、まだなつめは何時もみたいに甘えるようなやつではなかった。

悲しい。



「俺に家出えないような事?」

「違う、けど…」



云いたいけど云えない。
そんな感じ。

なつめは珈琲をちびちびと飲みながら、徐に鞄をあさりだした。


そして、ボイスレコーダーらしきものを取り出せば、再生のボタンを静かに押した。



「どうしたの?」

「まぁ、訊いて下さい」




『はぁ?何ふざけたこと云ってんの?あんたなんて、生みたくも無かったし、あんたとつるんでる桧音?ちゃん?だっけ?どうせ見せかけだけの友情でしょ?

あとさー、あんたの通ってる学校レベル低いよね、あんな所行くからダメ人間になんのよ

あ、本とかCDとかグッズとか、全部捨てといたから。つまんないものばっかだしさ、気持ち悪いし?
筵あんた捨てたいからね、マジで

あと一番はあれ、飯田利信だっけ?きっもいわー。ちゃらいしかっこわるいし、だめじゃん、てか身体目当て丸分かり、もうあんたの人生もうおわりだね、あんたなんか産まなけりゃ良かったわ』



「…………」

「ムカついて家出しちゃった…」



俺含めそこにいたメンバーは全員固まってしまった。
一人、なつめだけは淋しそうにしている。

安心させるように抱き締めようと腕に力を込めようとしたら、なつめはいとも簡単に俺からすり抜けてしまう。



「ほら、やっぱ、こんな僕を好きになるなんて、身体目当てってみんな云ってましたから、」

「違う!身体目当てなんかじゃねぇから!」


構わずに強く抱き締める。
なつめは、多分毎日堪えて堪えて、俺達や友達と要る時は、必死に笑顔を作っていたんだと思う。

好きな人の辛い事に気がつけなかった。
自分に苛立つ。



「でもでも、じゃあ逆に、僕を愛してくれていましたか?」

「なんで過去形なの?今でも愛してる」

「じゃあじゃあ、どうして、付き合ってから、何にもしてくれないの」

「…はぁ……」



美緒が溜め息をついた。
俺は何も云えずに固まってしまう。

自分が、怖がる相手の為に進展を拒んだり、そんな事は全て相手を不安にさせるだけだったのかと。

逆に、したいようにすれば心無しの行為と疑われてしまったり。


女の人ってちょっと複雑だ。


美緒の溜め息に肩を震わせながら俺をみた。
そして、目にいっぱいの涙をためて美緒に頭を下げている。



「ごめんなさい…」



ぽつりと吐いた言葉に美緒はもう一度溜め息をつけば、携帯を開いて、なつめへ投げ付ける。



「へッ!?」

「それ、ディスプレイ見て。右キーが次のメールね」

「えと、」

「ウチとノブのメール。早く読んでよ」



何時もよりワントーン低く話す美緒に怯えながら、なつめは美緒の携帯に目を下ろす。

そこには多分、昨日したであろうメールが書かれていた、と思う。

あ、やっぱ自信ないや。
でも取り敢えずこんな内容だった筈。



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fm ノブ
sub (無題)
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美緒、俺どうしよう
最近なつめが好きすぎて
ヤバい
そろそろ進展したいんだ
けど、がっついて嫌われ
ちゃったら嫌だし、
何より身体目当てって思
われたら嫌じゃん
でも好きだから、あれそ
れしたいし…

美緒ならどうする?

───────────
───────────
to ノブ
sub RE:
───────────
それはウチに云われても…
取り敢えずキスしてみたら?
嫌がられたら止めればい
いんじゃない?

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───────────
fm ノブ
sub RE:
───────────
断られたらやっていけな
いから…
あー俺なんかがなつめの
彼氏でいいのかな
何もしてあげられないし
俺ばっか好きだったらど
うしよう

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───────────
to ノブ
sub RE:
───────────
知らないよ
てかノブもなつめも
自分が思ってるより遥か
にお互いの事好きだから
ね?
見てると焦れったい
───────────



あとは恥かしいから云えない。
御想像にお任せしよう。

取り敢えず、なつめが静かに携帯を美緒に返していた。
そして、複雑そうな顔をしながらフッキーの元へと近付く。



「あれ、本当かな、」

「メールなんだからそうでしょ。てかそんなに心配なら俺のも見る?はい」



どんどん俺の醜態が晒されてってる気がする…。
溜め息をつきながら二人の行動を見ていると、なつめはまたゆっくりと俺の元へやって来る。

どうするかなと見守りながら相手と目をあわせると、彼女は小さく手を広げた。


これは、抱き締めて、の合図。

俺は立ち上がり、なつめの目の前に立てばそっと腰に手を回した。
そして、存在を確かめるように抱きすくめる。







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