復活夢2

□しとしとと降るその儚さに
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「おや」



空を見上げれば怪しい雲行き。


少ししたら雨が降りそうなその天気だったから、僕は傘を持ち出し黒曜を出た。
どうやらこの行為は正解だったようで、今雨がぽつぽつと降り初める。


タッチ式のその傘をパサリと広げる。
そして上に掲げれば、視線の先に雨宿りしても水を受けてベタベタになっている僕の想い人の姿。


僕は、彼女に向かって歩き出す。



「ぁ」

「こんにちは」



傘を差し出すも、良く見ればまあ本当にずぶ濡れだった。



「(タオルも用意しておいて良かったですね)」



鞄からタオルを取り出して彼女の頭にかぶせてやる。
きゅっと目を瞑って驚いていた彼女だが、何か分かるとぱぁあと目を輝かせた。



「わぁ骸さんだが!偶然ですねぇ」

「えぇ、何処へ行くつもりでしたか?」

「なんとなく。ぶらぶらとしてた」

「では」



すっと差し出した右手は、きちんと取ってくれたようだ。
ひやりとした感覚に微笑むと、近くの喫茶店まで連れ込む。

えへへと笑う彼女は、もう目茶苦茶可愛い。


ちょっとさっきからものすごく叫びたかった事云っていいですかね。
いや、本当すこしだけなんで。

てか


君に拒否権はないから。


…おっと恭弥くんが出て来てしまいましたね。
取り敢えず。




なつめでら可愛いぃいいやっふぃいいッ!


失礼しました。



「骸さん?」

「ぁ、なんでもないですよ」

「そっか、じゃあ…座りましょうか」

「座りますか」



ゆっくりと店内を歩きながら席まで向かう。



「ぁ…雨……」

「止みそうですね」

「そういえばどうして話かけてくれたの?」

「好きな人だから当たり前です」

「ッそ、そか」



おや、顔が真っ赤で可愛いですね。




本当は好きだからとかそんな甘い気持ちではなかった。
好きなのは間違ないないけど。


軽く雨に打たれながら立っている彼女の姿がとても雨と同化していて。

消えてしまうかと思ってしまったから。









しとしとと降るその儚さに



(怖くなって手を伸ばしてしまった)
(自分から離れてしまう気がして)
(側に居たくなる)












end.

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