他作品

□君と紡ぐ夢
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「えっと……Cminorが…こう…??あれ…?」



私は、片山遼さんというシンガーソングライターさんにあこがれて、彼みたいに誰かを励ましたくて最近音楽を始めた。
何も知識がない中で、とりあえずギターを持ってみる。
でもてんでわからなくて、もう何日も公園で練習をしていた。

歌を作るだけなら、別にDTMという手もあるかもしれない。
だけど私は、この手で音を作り出したいのだ。

だけど…。



「わっかんないな…」



私は全く手を動かすことができない。
そんな時目の前に現れたのが、彼。



「えっと…教えましょうか…?」



そう、片山遼。
…そう…?



「ぇええ!?!?」



まさか片山さんがここにいるなんて思ってなかった。
てっきり東京…あれ?今日って何日だっけ…?

ばっと携帯を取り出してみれば、今日は地方の私が住んでいるところに路上ライブに来る比ではないか。
時間は?

あと3時間ほどある。
なにこれ、すっごく嬉しい。


かれはどうしたものかと心配そうにこちらを向いた。



「えっと…大丈夫ですか?…て、ぁ。君は…」

「ふぇえ…?」



気がついたように私の手をつかむ片山さん。
え、何?



「夏海空ちゃん…だっけ…?ほら、よくファンレターくれる子…」

「ぇ!?ぉおお、ぼえて…?」



まさか顔とファンレターと一致してくれるだなんて思っていなくて、思わずギターを落としてしまう。
でも傷はないようだ。
ギターを握りながらふるふると震える私に、彼は背後にまわり、私の手を包み込み話しかけてくる。



「えっと…?」

「Cminorはこう、で…ピックは、こう。……じゃんじゃんじゃかじゃん…」

「じゃ、じゃ…?」



見よう見まね、というかおなじ手つきで弦を引けば、先ほどとは違った綺麗な音色が響いた。
すごい!



「これ、ひきたいの?」



彼が私の足元から拾い上げたのは私が作ったデュエット曲。
片山さんをイメージして作った曲を見られ、恥ずかしくなった。



「かして、それ、俺好き」



取り返してみるも真剣な表情で見られてしまったため仕方なくそれ自ら彼に手渡した。



「んーと…ミ…ラ…」



ぶつぶつと小言を云いながら、彼は自分のギターを取り出し、私が作った曲を引いた。
そして、歌を口ずさむ。



「♪〜君に…届いた不協和音…」

「♪〜ま、まだつたない音だけど…」

「「♪〜いつか一緒に歌う協和音となれる筈」」



少しだけ歌う私を見て、彼はふわりと笑った。
そして、曲を最初から最後まで弾き終わり、私を見る。



「これ、君の曲でしょ?俺に歌わせて、買わせて…?」

「……ぇ…?」



一瞬訊き間違いかと思ったその言葉は、彼の視線の暑さ下本物だとわかる。



「ぇ…私の、こんなんで、いいんですか?」

「夏海空ちゃんの、この曲だからいいの。…だめかな?…よかったら、これデュエットでしょ…?一緒に歌わない…かな…?」



その言葉に、私ははいと大きな声で頷いた。









君と紡ぐ夢



(それから、私たちの歌はヒットした)
(それを機会に私たちは交際を始める)
(そして、夢は二人の協和音でくくられる)






あのとき、君の曲にすっごくひかれた。
君自身には最初にライブに来てくれた時から惹かれていたけど。

実はあの時一緒に歌おうと誘ったのは、
君との関係が築きたかったからなんだ。

















end.

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