他作品

□過剰評価
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櫻井くんは、私の中では目も合わせたらいけないくらいに凄い人だ。
ラクロス部でも頑張ってるし、何時もきらきらしてる。


今日も私は彼のきらきらしてる姿を教室から見ることしか出来ないでいた。



「……あれ、夜咲?」

「ぁ櫻井、くんッ」



少し余所見してたら部活が終わったらしく櫻井くんが教室へ入って来た。
因みに私の隣りの席だったりする。

櫻井くんは私の隣りまでくるとがたがたと机をあさる。



「お前、何時も此所にいんの?」

「にゃう!?」



いきなり真横に立った櫻井くんは小さく笑った。
まぁいきなり変な声出したからだからだと思う。



「なに?にゃうって…」

「ぁあう、ごめんなさい…」

「…で?何時も残ってるの?」



何故か私にぐっと近付いてくる私。
心臓ばくばくで恥かしくて恥かしくて仕方ない。
私は何時もこの教室の窓辺で櫻井くんを眺めてた。

怖いから話し掛けるなんてことはせずに。



「…今日はたまたま…だよ」

「…そか?」



ぐっと硬直して上手く言葉を発することのできない私を、まっすぐにとらえる相手の瞳。
何もかも見透かされたような気分になり、とても気持ち悪くて仕方がない。

私は、私みたいなものは櫻井くんと話してはいけないのだ。



「…それ、なんだ?」



ふと櫻井君の視線が、机の上に広げておいてあるノートへと移った。
なんだっけ?と思いながら自分もそれを追うと、そこには部活をしている櫻井君が沢山描かれたお絵かき帳なるもの。

いけない、そう思ってそれに手を伸ばすよりも先に、櫻井君はそれを取り上げた。



「ぁ、あ…!!それだめ!」

「…!なんだよこれ、…俺…?」



絵には自信があるんです。
だからそこに描かれているのが自分だとすぐに理解できたようで、こちらをまたまっすぐにみてくる。
その瞳に映っている私は、とても情けない表情だった。



「…俺、だよな…?」

「ぅはい…そう…です」



怒れられる、または引かれる。
ああ、終わった、始めようともしなかった私たちの関係。
私の片思い、ばいばい…。

なんて思ってぎゅっと目を閉じたら、上からは思いもよらない声が降りかかってきた。



「すっげ…!すげぇよ、夜咲…!めっちゃ似てるじゃん、俺、え、かっこい…!おま、すっげぇ絵うまいのな…!」

「…ふぇ…?」



想像外の反応にきょとんとしたら、彼はそれに気がついた。
そして、あろうことか私の頭に彼の大きな手を置く。
その手は、とても暖かくて心地よかった。
なでなでと私の頭をなでる姿に、とても胸が高鳴った。



「ぁ、あ…あの、えと…?」

「なんだよ、まさか引かれるとでも思ったのか?」

「…はい、そうです…」



くくっと笑えば、そんなわけねぇだろと云ってくれる。
嗚呼、貴方って人はどうしてそんなに良い人なんだろう。

なんて思ってると、櫻井君はふと、とても真剣な表情になった。



「夏海空」

「は、はい!?」



いきなりの名前呼びにびくんと震える。
何なにどうしたの!?
彼を見つめれば、その顔は気持ち、赤かったように見えた。



「…俺、知ってるよ。何時もお前がここから部活みてるの」

「…ぇ…?」

「で、最初は何だろうっておもってた。そっから、俺はお前を意識するようになった。で、気がついた。…夏海空、いつも一生懸命で、皆何もできないって云うけどさ、できないって思ってても諦めずに、くじけずに頑張って、すっげぇ、輝いてた」

「……ぁ、え…」



一体何というのだろうか。
大好きな櫻井君が私を褒めているというかなんというか。
どうしていいかわからず、ただ私はうろたえる。



「…俺、そんな夏海空が、好きだ」

「……ぇ!?」



どういうことなの。
目の前の櫻井君は、私に告白している。
うれしい気持ちとよくわからない気持ちがぐちゃぐちゃに混ざり合って、思わず涙がこぼれた。



「わ、え!?ごめ…!嫌だった…か?」



不安そうに尋ねる彼に、私は首を振ることしかできなかった。



「ちが、そんな、違うよ、櫻井君。そんなの、私じゃない!」

「は?」



やっとでた言葉は私を否定する自己嫌悪。
気持ち悪い自分をぶちまける。



「私、そんな人間じゃない!何やっても上手く行かなくて、皆に笑われて、悪あがきしかできないだめだめだもん!」



きっと相手を睨んでみる。
そこに彼はいなかった。
目に映ったのは、白い学生シャツと微かに香る汗のにおい。

抱きしめられたみたいだ。



「自分を、卑下…するなっ」

「ぅぇぁぅ!?」



ぎゅっと込められた力。
勿論私はそんな経験がない訳で、ばっと離れると自分の体温が激しく上昇したのがわかった。
でも、多分それ以上に櫻井君の顔は赤くて、何より真剣な表情で。



「…お前が苦しんでるの、辛いんだよ…。…夏海空、好きだ。付き合って下さい」

「ぇ、え」

「俺に守らせて下さい。」

「ぁっ…」



嬉し過ぎて涙が止まらない。
私は、櫻井君の手を取った。



「私、で、よければ…お願いします」

「夏海空が、いいんだよ」

「ぁぅ…っ」



櫻井くんは私の唇に、震えながらたどたどしくキスを落した。






















font color="#000000">過剰評価



(私の事を過剰評価する櫻井くん)
(だけど私の弱さを受け入れてくれる)
(そんな彼と始まったストーリー)













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