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□一章 壬生狼の巣
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「・・・・ん・・・?」
(目を覚ました、か)
「おはよう」
私は、襖越しに彼女が起きた気配を感じ、軽い挨拶をし、彼女の元へ歩いてゆく。
「あ・・・、おはようございます。潤南さん」
私が歩み寄ると少女、千鶴は律儀な挨拶をしてくる。
「いいよ、敬語なんて。同じくらいの年なんだし」
私はそう返し、それよりも、と言った感じに千鶴に聞いた。
「昨日は何でまた、あんなとこに?確か父上を探していたって言ってたでしょう?」
そう、昨日の晩この部屋に連れて来られてから軽くお互いに自己紹介をした後、彼女は
「父様を探しているんです」と言っていた。
私が問うのとほぼ同時に、ゆっくりと襖が開き、人の良さそうな男が顔を出した。
「ああ、目が覚めたかい」
男は井上と名乗り、
「すまんなあ、こんな扱いで・・・・・。今、縄を緩めるから少し待ってくれ」
と言い、苦笑を浮かべながら私たちの縄を緩めた。
「どうも」
と、私が返すと井上さんは少し笑う。
「ちょっと来てくれるかい」
「今朝から幹部連中で、あんたたちについて話し合ってるんだが・・・」
「あんたたちが何を見たのか、確かめておきたいってことになってね」
私は千鶴の顔をちらりと見て彼女の了承を確認してから、井上さんに向き直り、
「わかった。・・・・連れて行ってくれるんでしょう?」
と、答えた。