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□五章 朋友の詩
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「はぁっ・・・はぁ・・・本、命は池、田屋」
(池田屋・・・っ!)
「何だとっ!」
私と一君は顔を見合わせ、池田屋に向かって走り出した。
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「・・・新羅?どういうこと。何でここに居るの?」
池田屋が会合の本命だと言うことを千鶴から聞いて間もなく。
私は、何の前触れもなく現れた孤児院時代の旧友と再会を果たしていた。
・・・もしかしたらこれは、”感動の再会”と言うものの類なのかも知れない。
「おい、開口一番それかよ。もっと他に言う事があるんじゃないのか」
「・・・・」
あまりにも唐突な再会に戸惑う私に助け舟を出してくれたのは彼だった。
「だが、この状況では無理もなかろう」
そう。一君の言うとおり、私の言動は無理もない。
だって私の旧友、新羅は薩摩藩の風間千景と名乗った者と共に私達に向けて刀を構えていて。
彼ら二人の足元には新選組一番組組長、沖田総司が倒れている。
(意識を失っているだけ、か)
ひとまず、私はほっと胸を撫で下ろした。
が・・・。刀を向けられ、仲間を傷つけられて尚、笑顔で再開の挨拶ができるほど私は稀有な存在ではない。
「もう一度訊く、新羅。どうしてここにいるの?というか、どうして私たちに刀を構えてる?」
それ故なのか、私自身が手合わせの度に辛酸を舐めさせられてきたからなのか。
意識せず表情が険しくなってしまうのは当然のことなのだと思う。
「別に。特に理由は無い。・・・俺としてはむしろ、2年前にいきなり姿を消した幼馴染が目の前に居ることの方が疑問だな〜」
「・・・・・」
確かに私は散歩と変わらないような軽装で、荷物も持たずに旅に出た。
多分皆、心配したんだろうなぁ。と、思うからこそ私は彼に対してどう応えたらいいものかと思い悩んしまった。
(こういう場合は、どうすればいいんだろう・・・?)
再び黙り込んでしまった私の心境を察するかのように、今まで一言も発していなかった金の髪をした男が口を開いた。
「最早この地に用は無い。俺は行く」
そう簡潔に言い、味方であるはずの新羅を置き去りにして彼は歩き去ってしまった。
「おいっ!風間!」
「・・・あーあ。本当に帰ったよ、あいつ。悪いが潤南、再会の挨拶は今度だ。」
「えっ・・・?ちょっと!?」
新羅は風間と呼ばれた金髪の男を追い、足早に去っていった。
まるで最初からいなかったかのように気配も何もかもが消えるまで私はその背を見続けていた。