はるみち

□スノウホワイト
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[今朝の窓は曇ってるのね…]
みちるはポツリと一人で
呟くと、静かにベッドから
足を下ろした。
隣ではまだ恋人が
寝息をたてている。
みちるは彼女を起こさないように
そっと部屋を出た。
久々の休日だから、
まだまだはるかにくっついて、
体を温めても良いのだが
今日はそれどころではない。
思い立ってしまったから。
みちるはこう見えて、
思い立ってしまったら
実行しないと気が済まない性格なのだ。
寒さを断ち切るように
素早く着替えて家を出る。
はぁ、と吐かれたみちるの息は
目の前に白く残って
冬の温度を彼女に教えた。
本当は離れずに
いつまでもはるかの隣で
幸せを感じていたい。
だけど、思い立ってしまったのだ。


みちるは古風で小さな
手芸屋に来ていた。
[はるかには…、やっぱり

白が似合うわ、
タキシードだって、
白が一番はるかに似合うもの]
ふわふわした毛糸を
手にとってみちるは
ふふ、と笑った。
急にこの毛糸まで
愛しくなってしまった。
その毛糸を持って
家に帰るとあからさまに
苛々した様子のはるかが
ソファに座っていた。
[みちる…急に居なくなるなよ、
書き置きとかも無いから
焦ったんだけど?]
[ごめんなさいはるか、
コレを買ってきたのよ]
[何だいそれ?]
みちるの白い手が
小さな紙袋の中を
探るのをはるかは
まじまじと覗き込んだ。
[毛糸…?]
[うふふ、最近急に寒く
なって来たでしょう?
はるかにマフラーを
編もうと思ったのよ]
[温まるなら、マフラーより
みちるが良いな…]
はるかはみちるのを
抱き寄せて耳元で誘う。
[駄目よ、もう編もうって決めたんですもの私]
さらっとあしらうみちるに
はるかは[ちぇー]
と言って、上品に
マフラーを編み始める
彼女の姿を
眺めながらソファに
横になった。


みちるはマフラーの
3分の1くらいを
編み終えて顔をあげた。
夢中になって編んでいたので
何時間も経ってしまったようだ。
その証拠に、向かいの
ソファに寝転んでいた
はるかがいつの間にか
眠りについていた。
[あら…]
みちるは編みかけのマフラーを
テーブルに置いて、
はるかに毛布を被せた。
[お寝坊さんなのね]
くすくす笑って、
はるかにキスをした。
[ん…?みちる…?]
[あら…起こしたかしら?]
[僕が寝てる時は積極的なんだね?]
[そんな、ちがっ…]
初雪で曇った窓ガラスに
ふんわりと、キスで
言葉を塞がれたみちるが
映っていた。
 

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