ひぐらし小説

□竜宮レナのなく頃に
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ヒタ、ヒタ、ヒタと、
確実に「それ」は居た。
ひとつひとつ、丁寧に慎重に
私の後を着いてくる。
オヤシロ様…?それとも…。


あの惨劇から幾らかの月日が流れて、
ようやくこの雛見沢にも待ち焦がれた
平穏な日常が戻ってきた。
魅ぃちゃんも梨花ちゃんも
小都子ちゃんも圭一くんも
みんな、みんな何事も無かったみたいに
前みたいに仲良くしてくれる。
お父さんも元気を取り戻したと思う。
だけど何で、どうして今になって、
このうじ湧き病がまた…。
段々と、私の中の竜宮レナが分離して
ゆっくりと狂い始める。
かゆい。かゆいかゆいかゆいかゆい。
夜目が覚めるといつも
枕元や布団が血で染まって…。
そして誰かに見られてる。
こんなに楽しい夏なのに。
私はまた喉をかきむしって…

圭一君はグラウンドに出て毎日のように素振り。
あの時の悟史君のよう。
確か悟史君はあの頃
突然に素振りをやりだして
その幾日か後に、
悟史君と小都子ちゃんの叔母さんが殴り殺された。

それがどうして今になって、
圭一君が素振りを始めるの…?
まさか、あの惨劇を起こした私を消すために…
それとも、私がまたうじ湧き病を
再発したのがバレたの?
魅ぃちゃんは最近学校に来なくなった。
何だか園崎家の活動に力を入れてるみたい。
もしかして、
それもこの雛見沢から私を消すための動き…?

落ち着くんだ、仲間を信じることを
あの惨劇で学んだじゃないか。
だけど怖い。皆が私を消そうとしている。
そういう考えが湧いて、
そして足音がついてくる。
この教室の中の私の居場所がだんだん狭くなる。
「にぱぁ〜☆」
梨花ちゃんの口ぐせと一緒に
ポンポンと肩を叩く音。
声をかけてくれたのは梨花ちゃんで、
肩に手を置いてくれたのは小都子ちゃんだった。
「梨花ちゃん…小都子ちゃん」
「このところレナは元気無いのですよ」
「ああ見えて皆さん心配してますのよ」
「具合が悪いなら病院に連れてって
お注射お注射なのです。
お注射は痛い痛いなのです、みぃ〜」
「お…注……射…」
甦る。あの忌まわしい記憶。

あの夜、古手梨花は、ゴミ山の中で
私に怪しげな注射をしようとした。
そして、魔女としての顔を見せて嘲笑を浮かべた。
私にもう興味など無いと…
「?レナさん大丈夫ですの?」
「早く病院なのです〜
本当に具合が悪そうなのですよ」
古手梨花が私の腕を引っ張った。

ツメタイ。

「触るなあッ!」
お前らに殺されてたまるか!
私は古手梨花の腕を弾き、
自分の座っていた椅子で
思い切り殴り付けてやった。
ガツッ、ガツッ、ガツ!
「やめてくださいませ!梨花が…梨花がぁっ」
「痛いのですッ、レナ、痛いのですよッ」
教室がざわめき始め、
流れる空気が重くなるのを感じた。
梨花はもう動かなくなった。
死んだのか、気を失ったか、
はたまた死んだ振りをしているのか。
いずれにしても床には
バケツで撒いたような量の血が、
教室中に鉄分の匂いを放っていた。
「レナ!お前どうしたんだよっ!」
前原圭一がバットを片手に教室に駆けつけた。
また素振りをしていたのか…。
「り、梨花ちゃん!オイ小都子!
知恵先生を呼んで!」
「分かりましたわ!」
「どうしてだよレナッ!
どうして今になってこんな事!」
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